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____部屋でぼーっとしていると、ドアの方から少し音がした。
カサカサするような音で、一瞬誰しもが忌み嫌う茶色い虫かと思ったが、置いてある紙を見てその不安は消し飛んだ。
「お手紙……?」
封筒型のそれは、きれいな苺色。
表面には Aへ と、裏面には 莉犬より と書いてあり、どうやら差出人は莉犬様のようだ。
ドアの下にある僅かな隙間から差し込んだのだろう。
彼のしたことを想像して微笑ましくなる。
「どれどれ……」
開けて中の便箋を見ると、
『Aへ デートのお誘い♡
今日の15時頃、中庭のガゼボに集合!
莉犬様からの命令です。来なかった場合はわんわんの刑にします』
と書いてあった。
これはデートではなくただのお茶会なのでは……?
そしてわんわんの刑とはなんだ、と思ったが細かいことはこの際どうでもいい。
時計を見ると、14時20分を指していた。
この広いお城で、私の部屋から中庭までは どんなに急いでも10分ほどかかる為
準備にかけられる時間は正味30分だ。
何着か支給されているメイド服の中で、いちばんお気に入りのをクロゼットから取り出す。
黒地に赤いリボンがとても可憐なメイド服だ。
ガーリーなそれはどうやら莉犬様セレクトのようで。
莉犬様が頑張って選んだ、という裏話を聞いてから、いっそう思い入れが強くなった。
メイド服に着替え、ドレッサーからメイク用品を出し、並べる。
メイクはあまりしないのだが、プレゼントで貰ったものを特別な日につけることは稀にある。
時間がないのは分かっているのだが、こうやってわざわざ誘ってくれたのだからお洒落したい。
こういう、時間がないながらも人のことを考えながら準備する時間はとても楽しいし好きだ。
唇を薄い紅色に染め、頬はほんのり桃色に。
まぶたには薔薇色を。
……我ながら可愛い。
自分に自信も持てたところで、そろそろ時間だ。
少し早い気もするが 早いに越したことはないのでもう部屋を出ることにした。
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 菜々志さん» 菜々志さん ありがとうございます嬉しいです;; (2022年2月19日 11時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
菜々志(プロフ) - 高評価をもっと押させてくれぇぇぇ!!!ww (2022年2月19日 8時) (レス) @page7 id: ec6dd9f0aa (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん コメントありがとうございます! そう言っていただけて本当に作者冥利に尽きます……(T T) 体調にも気を配りながらこれからも更新頑張ります! (2022年1月15日 15時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - こんなに面白いと思った作品は初めてです…!体調にお気を付けて、そして更新も無理せず頑張ってください! (2022年1月15日 12時) (レス) @page50 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» コメントありがとうございます!わたし的に小説を書いていていちばん嬉しいお言葉、本当にありがとうございます…(泣 ) 最近寒いですもんね、体調に気をつけながら更新頑張ります!泡糖さんも体調を崩されませんようにお過ごしください✨ (2021年12月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2021年11月24日 21時