―110 残酷な優しさ ページ10
マーモンはリングをただつまんでいただけだったから、レヴィの時よりもやりやすかった。
ガァンとこだまする銃声に、全員の視線がAへと集まる
「トガセ!?」
「A!」
痛む手を抑えるマーモンはそれでもアルコバレーノで、ヴァリアーきっての切れ者だ。
すぐに飛ばされたリングを拾おうと急いだが、それもまたAの狙撃によって阻止された。
あんなに負傷している
今の状態のザンザスにリングをはめさせるわけにはいかない
「ムム、貴様っ」
「もういいでしょう、ザンザス」
銃口を向けてマーモンに「動くな」と脅しをかけながら歩み寄って行く
ベルフェゴールもただ黙っているわけがないとナイフを構えたが、Aがシルヴァから取り上げた銃は一丁だけではない
ザンザスの元で足を止めるとAは銃を下げた。
血にまみれた全身に広がる痣と強い怒りをたたえた瞳を間近で見て、眉間にしわを寄せる
「それ以上する必要は、ないはずだ」
「ってめぇ…くそ!!」
もう余力は残っていないはずなのに
ただ気力で、怒りで半身を起こし、よろめきながらも立ち上がったザンザスは吠えた。
ビリビリと空気を震わせるそれに気圧されたAは思わず半歩ひく
「ザンザス…やっぱりお前は…」
「うるせぇ!てめぇも!そこの女も!あの老いぼれも気色悪ぃ!!
同情などなんの意味もねぇ!くそくらえだ!!」
血を吐いて痛む体を揺らしながら怒号をまき散らすザンザスの目を見た沢田とAは、そこにある憤怒に隠れた悲しみに気づいていた。
なにがあろうと止まれないほどに強く、あふれ出るほど大きな激情
しかしそれは、特設されていたスピーカーから突然聞こえてきた思わぬ声に鎮静された。
《…俺にはわかるぞぉ
お前の裏切られた悔しさと恨みが、俺にはわかる》
「スクアーロ!」
死んだと思われていたスクアーロの登場
一同の驚愕はそれだけですまない
《下町に生まれたお前の母親はその手に宿る炎を見て
お前が9代目との間に生まれた子供だという妄想にとりつかれたんだぁ》
ザンザスは9代目の実の息子ではなく、血がつながっていない事
次期ボンゴレボスとして育ってきたというのに
ブラッド・オブ・ボンゴレなくして後継者とは認められない
その事実を受け入れるには、当時彼は若すぎた。
長年信じてきた彼からすれば確かに、盛大な裏切りで酷な事だったろう
優しさは時に人を傷つける
それが彼を揺りかご実行に走らせてしまった。
彼の言い分がよくわかってしまうAには、ザンザスをとがめることができなかった。
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なの - 久しぶりに読みに来たのですが、やっぱりぽんかんさんの小説はとっても面白いです。どれだけゆっくりでもいいので、更新いつまでも待っています。 (5月6日 23時) (レス) id: 516891f2ca (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 一夜さん» 長らく更新していてすみません、あたたかいお言葉ありがとうございます。ふたりとも幸せにするために頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 杏音さん» 長らく更新できずにすみません、シルヴァくんまた出てくるのでお楽しみにしていてくださいませ。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
一夜(プロフ) - 初めまして。ぽんかん様のこの小説がとても大好きで何度も繰り返し読ませて頂いております。トガセちゃんもシルヴァくんもとても大好きです。お忙しいとは思いますが、いつかまた更新されることを願っております。素敵な作品に出会えて幸せです。ありがとうございます! (2020年12月26日 4時) (レス) id: a1724270ec (このIDを非表示/違反報告)
杏音(プロフ) - はじめまして。どちゃくそに好きです私..!シルヴァくんすごく好きです!!続き楽しみにしてますね! (2020年3月14日 4時) (レス) id: 966729f8ef (このIDを非表示/違反報告)
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