覚悟は決めたよ、もう逃げない[3]―REBORN!!

―109　バタフライエフェクト ページ9

ボンベとランボをそれぞれ片腕に抱えて、保健室へ降りてきたA

ランボをベッドへ優しく寝かせると、新たに注射器を取り出した。

保健室は中庭を超えて裏庭側
グラウンドの沢田とザンザスの戦いによるとばっちりもないだろう

解毒をしてもそれは文字通り毒を解しただけ
針に刺された痛みや元から負っている傷の痛みは消すことができない

牛柄の服をまくって軽い痛み止めを打つ


「これでもう、本当に大丈夫」


本当はこんな小さな子供、痛み止めなんて使わない方がいいのだけれど


軽く毛布をランボにかけてやり、Aはリストバンドのモニターで現状把握をはかる


了平と山本が解毒済
獄寺に一応、雪と雷のリング、解毒後のふらつきを解消させる即効性の薬を人数分持たせているから、行動に支障は出ないはず


屋上で
Aは獄寺に、獄寺はAに
ヴァリアーを含むほかの守護者の救出を、ランボを「頼む」と言って別れた。

こういった土壇場ではいつもの敵意もなりをひそむ
沢田にしか懐かない狂犬のような男だが、沢田のそばにいるならそのままではいられないだろう

それは今気にすべきことではないが


Aはまた注射器を処理するといま一度、ランボの容体を確認して保健室を出る

クロームの救出ももうじき
思っていたよりも戦況の進みがはやいな

走りながら銃のセーフティを外す


さっきポールを撃った時も、雷のリングをはじいた時もちゃんと当たった。腕はなまったが落ちてはいない

この戦いで助けるべきはもうひとりいるのだと、Aは顔を引きしめた。


グラウンドに近づくにつれて強くなる冷気
下がる気温

ゼロ地点突破によってすでに、ザンザスが凍らされたのだ。


「くそ、はやいな」


これだから嫌だったのだとAは切なく眉を寄せる


"バタフライエフェクト"

蝶の羽ばたきが地球の裏で嵐を起こす


この世界において異端である者

栂瀬Aという存在が混入したことで決まっていた未来、進むべき彼らの道が歪んでしまうことをAはいちばん危惧していた。


クロームを迎えに行くのは、本来Aではなかった。

シルヴァだってAが存在したことにより雪という概念ができなければ、暗殺部隊などに入らず、またあんなクズでもなかったかもしれない


贖罪だ。


下駄箱まで回っていられない
廊下の窓からグラウンドへ飛び降りたA

目線の先ではちょうど
マーモンがザンザスに、いま大空のリングをはめんとしているところだった。


一度片足を踏み入れたならば


「中途にしてたまるか」


緊迫した校庭を走り裂いて
引き金をひいた。

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