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―134 声 ページ34

目元にまかれた包帯をそのまま指でなぞる雲雀
予想外の行動に、Aは呆気にとられたのか、されるがまま動けずにいた。


「目はどこにあるの」

「白蘭が、持っているはずだけど」


呆けた頭は今の状況を理解できていないのか
Aはうわごとのように、素直に質問の答えを返した。


そうだ

ひとしきりAをいたぶった後、白蘭は鎖で彼女の体を壁に縫い付け、そのまま手で目を


ぶわり、と汗が出て全身が泡立った。


鋭いアメジストの瞳が
三日月にゆがんだ口が
近づいてくる指先が、最後に見たものだった。


体が冷えていく


あの時、白蘭は欲しかったものを手に入れた子供のように喜んでいた。
甲高い声で嗤っていた。


覚えている


冷たい指が、自分の頭蓋骨へゆっくりと埋まっていく感覚
鋭く激しい痛みと、目の奥をかき回されていた時の、白蘭の楽しげな声


『ずっとキレイだと思っていたんだ。大切にするからね』


「っ…」


は、と薄く吐く息が震えた。

体から力が抜けて、壁に背をもたれたまま、ずるずると座り込みそうになるのを、雲雀の腕が許さなかった。

Aの腕を掴んだ雲雀の手に、小さな震えが伝わってくる


帰る場所なんてないから、途中で、逃げるなんてことできなかった。
逃げる力さえなかった。
自決しようにも、舌を噛むことができぬように猿轡をかまされて
苦痛から逃げる道なんて、どこにもなかった。


親を殺された。

居場所を奪われた。

師を殺された。


心身共に苦痛を与え続けられたAの限界など、とうの昔に越えていた。


だというのに、この娘はその優しさゆえ
後悔にさいなまれる多数を救うために、自分の声に気づかぬふりをして、押し伏せ殺した。


憐れな


包帯で顔の半分が見えないことに苛立った。
雲雀はAの顔を両手で挟み込むと、俯く顔を上げさせて、無理やり視線を合わせた。


「君は、僕を誰だと思ってるの」


目を抉り取られた彼女と、視線など合うはずがないのだが
それでも雲雀はまっすぐAを見据えて、ただ事実を突きつける


おそらくこの娘は、今後白蘭と対峙したとして、今日のようにうろたえたりしないだろう
多方面に盲目なところは自分に似ているが、愚かな彼女はほかの人間を切り捨てられない


ならばいつ声をあげるのか


「壊れてしまうのはつまらない」


すでに意識が朦朧としているAは、雲雀の手を払いのけるようにしてみせたが、雲雀はかまわずAを抱き上げ、財団へ向かう


「自業自得だ」


子供なのはどっちだと

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なの - 久しぶりに読みに来たのですが、やっぱりぽんかんさんの小説はとっても面白いです。どれだけゆっくりでもいいので、更新いつまでも待っています。 (5月6日 23時) (レス) id: 516891f2ca (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 一夜さん» 長らく更新していてすみません、あたたかいお言葉ありがとうございます。ふたりとも幸せにするために頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 杏音さん» 長らく更新できずにすみません、シルヴァくんまた出てくるのでお楽しみにしていてくださいませ。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
一夜(プロフ) - 初めまして。ぽんかん様のこの小説がとても大好きで何度も繰り返し読ませて頂いております。トガセちゃんもシルヴァくんもとても大好きです。お忙しいとは思いますが、いつかまた更新されることを願っております。素敵な作品に出会えて幸せです。ありがとうございます! (2020年12月26日 4時) (レス) id: a1724270ec (このIDを非表示/違反報告)
杏音(プロフ) - はじめまして。どちゃくそに好きです私..!シルヴァくんすごく好きです!!続き楽しみにしてますね! (2020年3月14日 4時) (レス) id: 966729f8ef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽんかん | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2019年3月17日 0時

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