―130 悪魔の話 終幕 ページ30
「トガセ…?お前なんで」
磔にされたまま鎖を通して、アジトから逃げ出す時そうしたように、炎を部屋中に巡らせて白蘭と空間を遮断させたAは、猿ぐつわを凍らせて噛み砕くと弱々しく顎で示した。
獄寺の問いにAは答えない
そんな時間はないのだ。
「さわ、だ まだまにあう、から 早く」
「っほんとか!?」
沢田を抱えた山本が脈を確認する
確かに、まだ息はあるが
そして西が手薄だとたどたどしく伝えるAに、ふたりはまだ動けずにいた。
この状況を見て、何も察することができないほど子供でもないがわけがわからない、と顔をひきつらせて次の行動を迷うふたりに、Aは強く言う
「そいつと私、優先順位を考えろ
この世界で、なにも切り捨てずに生き残る術は、ない」
その言葉に苦しみを感じつつも、沢田を連れて走りだした山本と獄寺
その背中を追うように悪魔のような笑い声がする
追わせてなるものか、ここで獄寺と山本を負傷させるわけにはいかない
Aが炎の純度を高めて、部屋の出入口をぶ厚い氷で封鎖すると、白蘭の高揚とした声が聞こえた。
「すごいよAちゃん!リングすら持っていないのにこんなことができるなんて!やっぱり君は興味深い
彼らのことは一旦置いておこう、まずは君だ」
バリィと硬い氷を突き破りながらAに忍び寄ってくる白蘭
興奮しきっている彼の顔が与えるのは恐怖と嫌悪、薄気味悪さそのものだ。
自分の体が恐ろしさに震えるなどいつぶりだろうかと、冷や汗を流すAは大きく息を吸って再度炎を灯す
大人しくさせるなどと言って、拷問を受けていたのは半月前まで
それからはただただこの状態のまま放置され、血はほとんど乾ききっていたものだから体力の回復も十分だった。
しかし相手は白蘭
恐ろしく強い
チャンスはきっと1度きりだし、自分に出せる最速でやり通さねばならないと覚悟を決める
Aの氷で割れてしまったガラスを跨いで近づいてくる
もう手が届く距離まで白蘭が寄ったその瞬間、Aは出来うる限り最大の力で彼を完全に凍らせた。
次いで自分を壁に縛りつけていた鎖を引きちぎると、部屋の隅に置かれたチェストへ走る
取り上げられたリングと匣を引き出しへおさめていたのを見ていたから、余計に時間を使うことは無かった。
部屋を飛び出し、途中適当な部屋から服一式を拝借して外へ
並存している森に逃げ込み姿を隠すと、コハクとツヅリの力を借りながら、ミルフィオーレの追っ手をかわしつつ日本を目指しつい先日、やっと帰国を果たしたのだった。
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なの - 久しぶりに読みに来たのですが、やっぱりぽんかんさんの小説はとっても面白いです。どれだけゆっくりでもいいので、更新いつまでも待っています。 (5月6日 23時) (レス) id: 516891f2ca (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 一夜さん» 長らく更新していてすみません、あたたかいお言葉ありがとうございます。ふたりとも幸せにするために頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 杏音さん» 長らく更新できずにすみません、シルヴァくんまた出てくるのでお楽しみにしていてくださいませ。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
一夜(プロフ) - 初めまして。ぽんかん様のこの小説がとても大好きで何度も繰り返し読ませて頂いております。トガセちゃんもシルヴァくんもとても大好きです。お忙しいとは思いますが、いつかまた更新されることを願っております。素敵な作品に出会えて幸せです。ありがとうございます! (2020年12月26日 4時) (レス) id: a1724270ec (このIDを非表示/違反報告)
杏音(プロフ) - はじめまして。どちゃくそに好きです私..!シルヴァくんすごく好きです!!続き楽しみにしてますね! (2020年3月14日 4時) (レス) id: 966729f8ef (このIDを非表示/違反報告)
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