―124 裏切者 ページ24
ガチャリ、とドアがつっかかった音がしてAは自分用に与えられた鍵を使った。
普段ならばアジトには日中誰かしらがいて、鍵は常に開いている状態のはずなのに
自室へと一直線に歩みを進めるAを呼び止めたのは、了平だった。
「戻ったのか、トガセ」
「…誰もいないのかと思った」
「ああ、俺が間違えて閉めていたんだすまんな
お前以外にも全員帰ってきているぞ
それより急いでどうしたのだ?遠征から帰ってきたら報告が先だろう」
「だから言ったでしょ、沢田もいないと思ったんだよ」
報告が先、とはまた。この10年でこの男も余程大人になったものだ。
この間まで暴走する彼を諌めるのは私の立場だったというのに、と足を止めることなく先を行くAはついてくる了平にどこか寂しさを覚えたような気がした。
それより全員戻っているとは珍しいことだ。
ここへは沢田とランボ、山本か獄寺が交代で残り、あとは皆それぞれの任を受けて世界中へ散っていたというのに
それももう気にすることなどなくなるのだが
沢田はいつも通りの部屋で執務に勤しんでいることだろう
報告はまぁ、後でいいかと行き先を変更せず
館内北側2階の端にある部屋に入ると、後ろで了平が絞り出すように言った。
「ご両親、残念だったな…
遺体は既に地下に保管してある、あとで行くといい」
「うん…ありがとう」
鮮血がとぶ
泣き叫ぶ見知った監視係の男
動かなくなった愛しい人たち
思い出したくなくて弱く頭を振り両親のことを一旦忘れると、Aは家具の少ない整然とした部屋の中で目立った一角
書類や様々な物でごった返している大きめの作業机へと向かう
肉弾戦が得意のAはあまりリングも匣も武器も持たない
これはだいぶ前に確立してから、今の今まで変わらずに持っているAの戦闘スタイルだ。
故に匣はすべてジャケットの内ポケットに、リングは数個指につけてあとはポケットにしまってしまえばよかった。
机の上からひとつひとつそれらを取り上げると、そこでまた聞こえた呼吸
音のしたそれはため息なんかじゃない、息をのんだ音
少しの違和感を感じて了平に目をやった瞬間、Aはすべてを悟る
嗚呼、さすがだ白蘭
「…どうした」
「お前こそ…帰って早々なぜそんな武装をしているのだ?まるで今から戦争にでも行くようではないか」
さっき日本に着いたんだろう、京子に茶を頼んでいるからゆっくりしよう、と
暗に、匣とリングを置けと言う
取引の内容は内密に
向こうの要求である自分の足でとは、Aの居場所をなくすことだったのか
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なの - 久しぶりに読みに来たのですが、やっぱりぽんかんさんの小説はとっても面白いです。どれだけゆっくりでもいいので、更新いつまでも待っています。 (5月6日 23時) (レス) id: 516891f2ca (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 一夜さん» 長らく更新していてすみません、あたたかいお言葉ありがとうございます。ふたりとも幸せにするために頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 杏音さん» 長らく更新できずにすみません、シルヴァくんまた出てくるのでお楽しみにしていてくださいませ。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
一夜(プロフ) - 初めまして。ぽんかん様のこの小説がとても大好きで何度も繰り返し読ませて頂いております。トガセちゃんもシルヴァくんもとても大好きです。お忙しいとは思いますが、いつかまた更新されることを願っております。素敵な作品に出会えて幸せです。ありがとうございます! (2020年12月26日 4時) (レス) id: a1724270ec (このIDを非表示/違反報告)
杏音(プロフ) - はじめまして。どちゃくそに好きです私..!シルヴァくんすごく好きです!!続き楽しみにしてますね! (2020年3月14日 4時) (レス) id: 966729f8ef (このIDを非表示/違反報告)
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