くまさんとはちみつ

＊ ページ9

Side：BLACK



慎太郎に誤魔化された。俺が心配してるの、気づかれたかも。

「あー、余計なことしたかも」

声かけたら慎太郎が気にする、なんて最初からわかってたのに。


でも、声をかけずにはいられなかった。
慎太郎が、真っ暗闇に堕ちていく。そんな気がしたから。


楽屋に帰ってきたら、慎太郎をどうしよう。
声をかける？それともそっとしとく？

明るく話しかければ、向こうも大丈夫かな。ソファの横にさりげなく誘導するのは、樹にやってもらおう。

〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜

楽屋を開ければ、机の上には、すでに包み紙とプラスチックが広がっていた。


Yellow『北斗、遅かったね。お弁当選んじゃいな』

「ありがと、お腹すいたわ」

Red『このサンドイッチうめえうめえ！！AHAHAHAHA』

Pink『(もぐもぐもぐ)』

Blue『俺この肉にしよーっ』


みんなでご飯を食べるのは、楽しい。
メンバーの、無邪気な姿を見られるから。

ひと段落ついて、椅子に腰掛ける。
いただきます、と声にしようとした時、ジェシーの声が和んだ空気を遮った。


Red『慎太郎は、どしたの？』


樹と視線がぶつかる。

「あっ、さっき編集者さんと話すって言ってた」

Pink『そうなんだ、それならもう来るね』


Red『…今日さ、慎太郎元気なくない？』


どうしよう、何て答えるのが正解？

みんなの顔を伺って、答えに迷っていたら、


Pink『ね、顔色悪そうだった』

Yellow『俺も思ってた。気にされるの嫌だろうから、黙って見てるしかできなかったけど』


…なんだ。慎太郎、全員にバレてるじゃん。こうなったら、有無を言わさず本人に聞くしかない。


Blue『俺と北斗で確認してたけど、やっぱみんな気づいてたか』

Red『あったりまえだよ、慎太郎俺の話全然聞いてないんだもん』

「帰ってきたら、とりあえず休ませよう」

Blue『だね、あいつすぐ隠すから』


黙って箸を動かす。
いつもは美味しいと思うこれも、慎太郎のことが気がかりで味を感じなかった。



Blue『…慎太郎、遅くね？』

慎太郎に心配をかけまいと、普段通りの会話が進んでいた。樹の声で、我に帰る。

Pink『話すにしても、長すぎじゃない？』

あと30分で休憩も終わってしまう。少しでも、慎太郎には休んでもらいたいのに。


「俺、スタジオ行って慎太郎見てくる」

ありがとーというみんなの声を背に、勢いよく楽屋を飛び出した。

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