くまさんとはちみつ

＊ ページ32

Side：BLACK




想像以上の出来事に、頭の整理がおいつかない。そんな小さな時から、痛みを持ったまま生きてきたのか。
俺たちの慎太郎にそんなことをする人がいるのかと、怒りが沸々とわく。




思い返せば、悩んだ時に励まされるのはいつも俺の方だった。
『大丈夫、北斗ならできるよ』って背中を押してくれた。
『北斗は北斗でしょ』って笑ってくれた。

計り知れない恐怖を感じていただろうに、一切そんな姿を見せなかった。




沈黙を破って、慎太郎がか細い声で呟く。

『初めて肩を掴まれた日から、誰かとくっついたりするの、苦手だったんだ』

頭が勝手に拒否するの。それで、みんなを怖がらせちゃう。俺に近づく人は、誰も悪くないのに。


そう言って、苦笑いを浮かべる慎太郎。




＿＿俺たちは、慎太郎のことを何もわかってなかった。


でも、慎太郎にも教えなきゃいけないことが一つだけある。


慎太郎がいなきゃ、俺たちはSixTONESじゃないってこと。



「ねぇ、慎太郎」

小さくなった背中を丸めたまま、何？とこっちを見つめる瞳。


「良かったら、ハグしても、いい？」


大粒の涙を流しながら小さく頷いた慎太郎に、そっと腕を回す。

事務所でよく泣いていた、あの頃の慎太郎を思い出した。



脆さも、儚さも、愛おしさも。
丸ごとぎゅーーっと抱きしめて、微笑み合った。


𝓕𝓲𝓷．

＊あとがき→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す