くまさんとはちみつ

＊ ページ11

Side：Pink



形相を変え、走って楽屋を出ていった北斗。
いつもマイペースでゆっくりとしている北斗が、こんなに慌てているのを初めて見た。

Blue『あの編集者さん、おしゃべりだから捕まってるのかもね』

Red『それにしても遅くない！？もう20分も経ってんじゃん』

ジェシーが騒ぎながら楽屋を歩き回っている。気持ちは分からなくない。
全員が慎太郎の心配をしているのは、間違いないから。

Yellow『ジェシー、落ち着け。帰ってきた時に慎太郎が戸惑うから』


…慎太郎、大丈夫かな。

慎太郎のいない昨日の撮影は、空気がいつもと同じようで、違っていた。
やっぱり慎太郎がいないと、どこまで声を出していいのか分からない。
普段は、慎太郎が先陣切ってくれるから。

まるで、太陽のない青空みたいだった。



「慎太郎、もっと元気に帰ってくるかと思ってた」

Blue『さすがの慎太郎でも、真冬に船の上ずっといたら風邪引くんじゃね』

「そうだよね、昨日も遅くに帰ってきたみたいだし」


ソファに毛布をかけ、温かい飲み物を用意する。慎太郎を休ませる準備はバッチリだ。

〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜

ドンドンドンッと、廊下で物音がする。何事かと思った瞬間、扉がバンッと勢いよく開いた。

Black『、、はぁっ、はぁ、はぁっ』

Blue『どした、北斗。慎太郎は？』

北斗が荒れた息を整える。顔が、いつもより青白く見えた。

Black『いなかった、スタジオに』

「えっ！？」

衝撃で、椅子から転げ落ちそうになった。

Yellow『いないって？編集者さんは？』

Black『休憩入ってから一度も喋ってないって。スタッフさんも、誰も慎太郎を見てないって』


…何が起きているのか分からない。

Red『慎太郎がどこにいるか誰も知らないってこと？！』

北斗が無言で頷く。

Blue『とりあえず、手分けして探すぞ。俺は1階行くから、この階と上、分担しよ』

Black『俺ここの階探すわ』

Yellow『3階見てくる。』

Red『じゃあ、3階のトイレ見てくる。あそこ広いし』

Blue『きょも、4階お願いできる？俺たちが昨日泊まってたとこ』

こういう時、冷静に動けるみんなは本当に頼りになる。

「わかった。何かあったら連絡しようね」

一斉に、スタジオ中に散らばる。慎太郎、どこに行ったんだろう。


心臓が、警報を鳴らすかように、拍動を起こしていた。

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