103話 ページ7
そして今私は船の中にいって何故か2人の為にケーキを作らなくてはならくなった。
「(はぁ……なんでこんなこと…)」
しているのだろう。こんなの無理矢理だし、勿論、断るつもりでいたけど……
「(麻里と私の家のことを言われると……)」
弱い。最近天王寺家も危ないらしい。すなわちそれは……私の家も危ないということだ。
『ねぇ、Aさん。天王寺さんと自分の家救いたくない?』
そんな悪魔の囁き。頭の中で警報が鳴っているにも関わらず、思わず私は頷いてしまった。
…最低だ。と思った。こんなのいちごちゃんが可哀想だし、麻里も絶対に望んでいない。でも、頷くことしかできなかった。そう思っていると…
「え?か、樫野。どうして」
不意に見覚えのある声が聞こえ、そっちに振り向く。そこには……
「あれ?いちごちゃんに安堂君……?」
私がそう言うと、2人もびっくりしたようにこっちを見ている。そりゃあ、そうだ。
「あれ?Aちゃん?何でこんなところに…?」
後ろから花房君も来た。三人とも相当驚いている。まぁ、当たり前の話なんだけどさ。
「話せば長くなるのだけど……」
私はそう言ってだんだん俯いていく。いちごちゃんは優しく聞いてくれた。…もっと怒ってもいいのに。だって私は人の恋人を売ったのだから。
「そっか……」
嫌われて欲しかった。ここでビンタされたのならどれだけ心が楽になるのだろう。しかし、いちごちゃんは私の手を握りこう言った。
「大丈夫だよ。Aちゃん。怒ってないから」
……ああ、貴方はどれだけ優しいの?でも、いちごちゃん。優しさは時に人を傷つかせるのよ?だっていちごちゃん樫野を……
「助ける気なのでしょう?樫野のこと。……まぁ、ここに乗り込んでくる時点でそうだったんだろうけど。いいよ。助けて。まぁ、そうなったら私の家はやばくなるけど」
私がそう言うと、いちごちゃんは動揺した。当たり前だ。私だってこんなことを言うつもりはなかったから。でも….
「助けたいのなら助ければいい。私の家のことなんか気にせずに」
そう言って私は早足で厨房へと戻った。そう、私の家がやばいのなら私がなんとかすればいい。私が全部なんとかすればいい。
「Aちゃん。本当にいいの?」
後ろから花房君の声が聞こえた。……私は立ち止まりこう言った。
「ええ。あんなこと言って悪かったわね。でも、本当にいいの。話したら楽になったし」
そう言いながら、私は走りながら、厨房へと戻った。
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作者名:かんな x他1人 | 作成日時:2020年8月2日 22時