112話 ページ16
「え?ど、どうしたんですか?海堂先輩」
何故そんなに慌てているのか全く分からず、私はそう言ったが、海堂先輩はそれを無視し、私のことを抱きしめた。
「え……?あ、あの…海堂先輩…?」
顔が熱い。優しく、抱きしめてくれるのが心地がよかった。何故、抱きしめられていたのか、それは全く分からないけど、でも嬉しいと思ってしまう私は駄目な女ですか?
「良かった……君が無事で」
「ぶ、無事?何を言っているんですか?」
私、何もあってないよ?海堂先輩何言ってるのか全く分からないけど……。
「あ……ご、ごめん」
そう思っていると、海堂先輩は私を抱きしめるのを辞めてしまった。……海堂先輩の顔が赤いのは気のせいだろうか?
「……ごめん。その……アマンドとミルクからその……君が事故にあったって聞いたから…‥その時はいってもたってもいられず、ここに来たけど…よく考えたら、事故に遭ったのなら病院とかそういう場所なのに……よくよく考えたら嘘だって分かったのに」
海堂先輩の声が震えている。どうして?どうしてそんなに優しい声でそんなことを言うの?そんなこと言ったら――。
「(……勘違いしますよ……?)」
私のことが好きって、そんな勘違いしてもいいんですか?そんな都合のいいことを信じてもいいんですか?そんな考えを渦巻きながら、
「…好き」
だから言ってしまった。もう、後戻りは出来ない。だから私は――!
「心配してくれる先輩が好きです。スイーツ作ってる先輩が好きです。私の頭を撫でてくれる先輩が好きです。……麻里のことを考えてる先輩も、アンリ先生に嫉妬に暮れている先輩も私のことを本気で心配してくれる先輩も好きです」
全部、全部言ってしまおう。ただの自己満足だけど。でも、私は……
「俺も…好きだ」
短く、そう言った先輩の言葉に思わず顔をあげる。先輩の顔は赤く染まっていて、ああ……と思った。だってこれは――
「…両思いでいいんですか……?」
「うん、両思いだよ」
サラッと海堂先輩はそう言ったから。だから私は笑ってしまった。あまりにもあっさりとそう言ったからだ。
「ふふっ……サラッとそんなこと言うんですね」
「そうだよ。俺はそういう奴さ。そんなことより……キスしていい?」
「き、キス?い、今ここで?!せ、せめて家の中で……!」
「駄目。もう待てない」
そう言って海堂先輩は私の唇を奪った……私、了承してないのに……強引だ……と思いつつ、嫌じゃ無い私がいるのに気付き、私は静かに目を閉じた。
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作者名:かんな x他1人 | 作成日時:2020年8月2日 22時