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陸拾 ページ10

「…ん…あれ……私……」

いつの間にか寝ていた。

「起きたか。」


その声が聞こえて、ハッとする。
手元には本はなく、無惨さんの大きな手がある。
後ろから包み込まれるようにして抱きしめられていると気づいた。



「無惨さん…?」

「本は、向こうに置いておいた。大丈夫だ、栞も挟んである。」

「栞……ペラペラの紙ですか?」

「あぁ。」

「ついつい本を読んでいる途中で眠たくなったみたいです。」

「あぁ、よく寝ていた。」


優しく頭を撫でられる。
無惨さんの腕の中はやっぱり落ち着く。


「無惨さん、昨日はごめんなさい。」
「……いや、あれは私が悪い。怖がらせて傷付けてしまった。」

無惨さんの顔は見れないが悲しい声がする。

「首も、足も血が出ていた……今も包帯を巻いて……」

「これぐらいなんて事ないです!怪我なんて前まで山でいくらでも…」

「そうじゃない…怖かっただろう…?こんな私が嫌いだろう…?」

…あぁ、あの時言っちゃったあの言葉……。ちゃんと訂正しないと。



「無惨さんのこと嫌いになんて天地がひっくり返ってもありえないです。無惨さんと私も同じです。」

以前言ってもらった言葉を言った。


「あの時はただ、思ってない事を言ってしまっただけです。本心じゃないです。」

「……それは本当か?」

「はい!」


そう元気よく返事をすればギューっと強く抱きしめられる。


「私を愛してくれ。ただそれだけで私は救われる。」
「はいっ。」


無惨さんが私に無償の愛をくれるのだから。



「…A、この着物……」

「昨日、血が染みちゃったので、童磨さんが……」

「そうか。……A、新しい着物を買ってきたのだが、着て見せてくれないか。」

「えっ……!?着物……、あのそんな私にお金を使うのは申し訳ないのですが…」


前も沢山着物、洋服買ってもらったというのに。更にまた……


「昨日の謝罪も込めてだ。受け取ってはくれないか…?」

「…っ…」

切なげな赤い瞳に見つめられ、否定のひの字すら消えていった。

「…ありがとうございます。」

そう言うと、無惨さんは微笑んで、着物が入っている桐箱を私の前に置いた。



「着付け手伝おうか。」

「いえっ!もう一人で出来るので!」

着付けなんて一生知らないままだと思っていたが、無惨さんの所に来たら着物は普段着。
無惨さんに手伝ってもらうのは恥ずかしくて堕姫ちゃんに教わり必死で覚えたのだ。

陸拾壱→←伍拾玖



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秋栄 - 李由華さん» おぉぉぉ!ありがとうございます!!続編は明日の0時ぐらいには出せればなと思っております!!深夜12時ぐらいにここに来ていただけたら、多分続編行けるはずです!!しっかりと期限までに出来るように努めてまいります!コメントありがとうございました! (2020年5月3日 13時) (レス) id: c61d719ffa (このIDを非表示/違反報告)
李由華 - 続編制作頑張ってください! (2020年5月2日 21時) (レス) id: a39b69135d (このIDを非表示/違反報告)
秋栄 - 鬼小夜千夢さん» アニメOPでも、少ししか映らないのにカッコ良さは際立って…もう無惨様は美しくカッコイイですよね!この作品でそう思っていただけたのなら光栄です! (2020年4月30日 15時) (レス) id: c61d719ffa (このIDを非表示/違反報告)
秋栄 - ひろかさん» 鳴女ちゃん本当に可愛いですよねっ(*´▽`*)私も大好きなんです! (2020年4月30日 15時) (レス) id: c61d719ffa (このIDを非表示/違反報告)
鬼小夜千夢 - 無、無惨様!死にそうなぐらいかっこいいし……あぁもう死にそう(//∇//) (2020年4月29日 17時) (レス) id: 998332dba8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:秋栄 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月28日 23時

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