鬼が好きな少女は。弐

玖拾漆 ページ47

「Aちゃん、触るよ。」


そっと私の腕を触れた。

「あっ…」

痛い。


「…骨は折れていないけど、打撲だね、あーこれ、ヤバイよ。」

「…A。」

黒死牟さんが私に手を伸ばそうとしゃがむと、童磨さんに手を弾かれていた。


「いくら上でも今はAちゃんには触れさせられない。」

「…」

「黒死牟さん…寂しかったんだよね。」

私はうつ伏せのまま、顔だけ黒死牟さんの方に向けた。


「…」

コクン、と黒死牟さんが頷けば、童磨さんは目を見開く。

「いや、Aちゃん何言ってるの〜？」

「…童磨さん、この事絶対に無惨さんに言わないでね……。心配かけたくないから……」

「いや、バレるよ？だって、上半身全部痛いはずだし。それに黒死牟殿だったから。」

「大丈夫！何とかなる。」


私はゆっくり起き上がり、座っている童磨さんの額に自分の額を重ねた。


「さっきは助けてくれてありがとうっ」

「…そういうのズルいよAちゃん。あの御方鈍感じゃないからバレるよ。」

「打撲程度ならなんとかなるよ。骨折じゃないから。」


童磨さんは、はぁ〜と溜息をついた後、扇子を広げた。


「壊死させないように冷やすから。」

「童磨さん、ありがとうっ。」

「同じようになったら、次は氷漬けにするからね〜」

「…それは…怖いね…」


「まず着物脱いで。」

「うん。」


帯が取れない。


「私が…やろう。」

黒死牟さんが、丁寧に帯を外してくれる。


「ありがとう、黒死牟さんっ。」

「……A…本当に…申し訳……ない。」

「いいよ。黒死牟さん。寂しかったんだから。」

「……違う。」



「え？」


「…私の…気持ちに気付かずに…Aが笑顔を見せている事に…………腹が立った……のだ。」

「えっと。」


どういう事だろう。

「そんな事どうでもいいから脱いでね〜。早くしないと腫れるよ。」

「……」


黒死牟さんはそれ以上何も言わなくなり、丁寧に紐を取って、着物を脱がしてくれる。



「はい、その白い下のやつも脱いで。」

「……」


黒死牟さんが無言で脱がそうとしてくるので、慌てて止める。

「肌着は……！！」


「腫れている部分ちゃんと確認しないと。」

私が粘っているのを鳴女さんが気付いて慌てて割り込んで来てくれた。


「Aさんは女性ですから……上弦の弐様。」

「じゃあ、琵琶の君が確認して、俺に伝えて。」


「承知致しました。」


私は鳴女さんに連れられ別室に移動した。

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