鬼が好きな少女は。弐

捌拾伍 ページ35

「A、帰ったぞ。」


無惨さんの声が聞こえたので、襖を開けて、走り出す。

「よぉし！行くぞぉ！！」

そう言うと、無惨さんは不思議そうな顔をする。



滑り技！！


黒死牟さんと同じように滑って無惨さんの背後を取ろうとすると、


「…今日は袴姿なのだな。髪も高く縛って…とてもよく似合っている。」


「えっ…あ、ぁ……ありがとうございます。」

股下を通る前に無惨さんによって持ち上げられた。


「それで…、この少し腫れている……打撲……どういう事だ？」


持ち上げられた後、手首を見られて顔をしかめられた。
これでも結構童磨さんのおかげでマシになったほうなんだけどなぁ。


「……特訓って言ったら怒ります…？」

そう聞くと、無惨さんは私を横抱きに持ち変えると、襖を開けて、部屋に入った。



「別に私は怒ってなどいない。」


私を畳の上に降ろすと、無惨さんは袴を思いっきり上に上げて、打撲だらけの足が露わになる。


「えっと、あのこれは…」

「Aをここに連れてきた時も傷だらけの足だった。」

「……裸足で走ってましたから……。」

「こんなにも沢山打撲を作って……そんなに大切な特訓だったのか。」


優しく言われて、私は頷いた。


「自分で身を守れる人間になりたかったんです。」

「…Aを危険に晒すような事は私が絶対にしない。約束しよう。」

ギュッと抱きしめられて、私も、ゆっくり抱きしめ返した。


ごめんなさい。無惨さん。
ごめんなさい。
私は命を懸けて貴方を倒すのに協力するんだ……。

大好きで大好きで、

でも……無惨さんにもう人を殺させたくない。手を汚させたくない。


「無惨さん……大好きです。」


一緒に死にましょう。


「私もAを愛しているよ。」




私は無惨さんにギュゥゥッと抱きつきながら、笑った。



＊＊＊



私は昼は鬼殺隊の方とあって、お館様からの手紙を受け取り、その場で読んで、焼く。


「Aさん、大丈夫ですか。」

「はいっ。生きてるうちに沢山お団子食べておかないとですね！」


私は私は団子屋へと足を運んだ。

捌拾陸→←捌拾肆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す