15話 絶望を切り裂く力 ページ49
目の前の狂人は僕の血を……いずれは完全な死神となった僕の力を欲しているという。
アリエッタは未だ微動だにせず横たわったまま。
仮に僕が彼女を連れて逃げようとしてもそれは叶わないだろう。
ああ、でも、そうか
だからマーカスも僕に近づいてきたのかな
そうじゃなきゃ貴族位をもらえるチャンスを棒に振るわけがない
僕自身に価値なんて何もないんだから
やっと納得がいって、胸につかえていた何かがストンと落ちた気がした。
どれだけ忙しくても時間を作って僕の部屋に足繁く通ってくれたマーカス。
危険を冒してまで僕を連れ出し、命を落としてしまったマーカス。
彼の愛を感じられなかった訳ではないが、
隣に寄り添い、その心の内を優しく囁いてくれていないとやはり信じ続けることができない。
ああ、どうせ僕は死なないのだったら、やっぱりあの時あの洞窟で彼を逃して僕が落盤を起こしてしまえば良かったのだ
もしくは己の傷口をこじ開け、その血でもって彼の折れた脚を癒やすべきだった。
救えた命を亡くしてしまった、僕のせいで。
あれ、僕は何をやってるんだろう
どうしてまだ生きようとしてるんだろう
狂気が人を象ったものが、ゆっくりとこちらに迫ってくる。
それが自身を何度も何度も傷つけることになると解っている上で尚体は動かない。
僕は死なないらしいのでその苦痛も終わりは来ないのだろう。
(まあでも)
彼にしてしまったことを思えば今更ここでみっともなく生にしがみつく気も起こらなかった。
それは後悔と贖罪でもあったし
昂ぶり燻る気持ちを落ち着けたいが為の自傷行為にも似ていた
ただ、その狂おしいまでの破壊がAに齎されることはなかった。
それは城塞か何かを思わせた。
「すまない、ひどく待たせてしまった様だな」
Aと黒いスーツの男の間に、月光を受けて鈍く輝く蒼い全身鎧の戦士が立っていた。
たった人1人分の質量しかそこに生まれていないはずなのに
Aはそこに堅固な要塞があるかのような
万の味方を得たような
そんな安心感が溢れ出してきた。
今まさに生も死も諦めようとしていた愛しい人物へ
龍は視線を向けた。
敵へ堂々と背中を見せることになるのだが、そこに隙は一切感じられない。
縦に開いた瞳孔がスッと細められ、Aの痛ましい姿をしっかりと捉えた。
「本当にすまなかった……許してくれ」
悲痛そうに表情を歪め、そう哀願したアスールは再び前を向く。
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます！とっっっっっっっても嬉しいです！！！続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います！あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります！ (2021年3月25日 23時) (
レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫（（うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます！これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします！ (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫（（うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます！あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします！ (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あああああ | 作成日時：2019年4月21日 20時
