演武 ページ36
予想外の衝撃の大きさに軽くよろめきつつも、無骨なヘルムの剣士は即座に反応する。
剣の軌道を後ろの金髪の少年へと向け、一閃。
しかしその刃が皮膚を捉え肉を裂くことは叶わず、代わりに少年が頭に巻いていた包帯を地に落とした。
手に巻いたものと同じぐらいに汚れたそれが覆っていたものが露わになる。
「チッ……鬼族か！」
輝くような金の髪から真っ直ぐに覗くのは、黒々とした二本の角だ。
ちょうど耳の上の辺りに生えているそれはあまり大きいものではなく、なるほど確かに厚く包帯で覆ってしまえば目立たなくなるだろう。
観客も次第に少年の角を視認していき、賞金稼ぎの二人に向けられていた歓声が一気にトールへと降りかかる。
鬼族。
頭部に形状、本数、大小様々な角が生えていること以外は至って普通の容姿を持つ種族だ。
ただしその膂力はかの獣人をも上回る。
かつては栄華を誇っていたらしくお伽噺にもよく出てくる程の知名度だが、現在となっては大きくその数を減らしており
鬼族は既に絶滅しているとまで言われている。
しかしAは鬼族のことは知らなかった。
普通誰でも知っている話をわざわざ改めて話すようなことはされない。
そういった所もやはりドラゴンは別格であると言わざるを得ない。
「鬼族だと？！」
賞金稼ぎのもう片方が驚愕から動揺し、アスールの盾に強打されてしまう。
衝撃を逃がすために大きく体を回転させるついでに蒼の騎士から距離をとる。
次いでトールから二撃目をもらった片方も同じようにして合流した。
「久しぶりに強ぇ奴と当たれたな……」
「ああ、全く嬉しすぎて涙が出そうだ」
二人以外には負け惜しみから出た台詞にしか聞こえないだろうその呟きは、本心からの言葉だ。
彼らは戦うことそのものを生きがいとしている。
こちらがかなり不利な状況で強大な相手に死闘の末勝利を掴む、その時の快感は何物にも代えがたいものだ。
ヘルムに隠されたその顔が歓喜の形に歪められる。
先に動いたのはアスール。
トールが攻勢に出た時に斬られない様、自らが走り盾の届く範囲を動かす。
牽制のために鞘に収められたままの剣を恐るべき速度で振り抜くも、賞金稼ぎの片方に剣の腹で上手くいなされる。
しかしそれでいい。
トールの体術には真正面から一対一でぶつかる分には捌ききれるだけの確かな力量がある。
「さっき殴ってやったモツはどうだよ？悪ぃけどさっさと終わらせてやるぜ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます！とっっっっっっっても嬉しいです！！！続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います！あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります！ (2021年3月25日 23時) (
レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫（（うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます！これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします！ (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫（（うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます！あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします！ (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あああああ | 作成日時：2019年4月21日 20時
