本能(ymin)

続・本能(ymin) ページ5

「んッ、ん、あ……や、ま……」
「ん、ごめん、もうちょっと……」
「だ、めぇっ、あ、あっ……！
もう、いい、加減に……しろッ！！」


ガンッ！


「いってぇ！！」
「ば、バカじゃねぇの、もうムリだよ！」


殴った頭を押さえてる山田。
自業自得ってやつだ。


先日、意図せず山田の秘密を知ってしまってからというもの、時々こうして、俺は山田に血をあげてる。
山田は吸血鬼の一族で、普通の食事じゃ栄養がとれないから血を飲まないといけないんだって。
空腹とかは人の食べ物で全然平気らしいけど、不規則に訪れる猛烈な渇きが辛いらしい。
今日もそうらしくて、血を飲ませてあげたんだけど……。


「飲み過ぎだよ、貧血で倒れたらどうするの！
ここ楽屋なのに！」
「皆帰っちゃって俺と伊野尾ちゃんだけだもん、大丈夫だって」


山田は時々ほんとバカだと思う。
それで前回俺にバレたんじゃん……。


「ねぇ、そういえば最近多いよね？
てか何で俺ばっかりなの？
知念だっていいじゃん！」
「あー……だって、知念より伊野尾ちゃんの方が美味しいんだもん。
それに、知念は血をくれる代わりに色々奢ったりあげたり大変なんだよ……。
この間ソファーあげた」
「そ、そうなんだ……」


知念も知ってたみたいで、前は知念があげてたんだけどね。
こういう理由で俺が多いんだね……。
俺も何か要求すればよかったかな。


「伊野尾ちゃん、首の傷消すから斜め上向いて」
「あ……う、うん」


噛み傷残ってたら大変なことになるからね。
吸血鬼の唾液には治癒力があるから、飲み終わった後は舐めて治してくれるんだけど……。
これが、すごくむず痒いっていうか、なんかゾクゾクしちゃって……。
ヤバいよ、気持ちいいんだもん……。


「ッ……んッ……」


ちゅ。


え？


「はい、おしまーい」
「え、あの……」
「じゃあ俺この後ドラマの撮影あるから、また明日ね伊野尾ちゃん！」


そう言って楽屋を出てった山田。
残された俺は呆然。
だって、今。
治してくれた首筋に、キスされた。
え？キスじゃないの？
何だったの？
どういうつもりなの？


顔が赤いまま、俺はその場に崩れ落ちた。
貧血じゃないのに、動けなかった。

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