本能(ymin)

＊ ページ21

「気分はどう？」
「ん……ちょっとスッキリした。
落ち着いたよ、ほんとありがと知念」
「いいの、いのちゃんだもん」


知念の優しさに、また泣きそうになる。
そういえば、ソファに寝かせてくれてたんだ。
座るとこ全部取っちゃってたのか。


「……ほんと、ごめんね」
「なーにーもう、謝らなくていいよ。
涼介が、話をしないのが悪いから」


やまだが……話をしない……？
やっぱり何か隠してるの？


それを、知念は知ってるんだね……。


おれにはまた、内緒ってことか。
もやもやして、目の上のタオルを取って、ソファから立ち上がる。


「……おれ、帰るね……」
「えっ、どうやって？」
「どうって……電車で」
「ちょっといのちゃん、今何時だと思ってるの？」
「ふぇ？」
「夜中もいいとこだよ。
電車だってとっくに無いし、泊まっていきなよ」


時計を見れば、ほんとに真夜中だった。
そういえば知念の家に来たのは22時ぐらいで。
３時間以上寝ちゃってたんだ。


「ほら、バスタオル出してあげる。
先にお風呂入っておいで」
「う……うん……ありがと」


笑ってお風呂場へと促してくれる知念に、さっきもやもやしてしまったのが申し訳なくなった。
知念に甘えて、シャワーを借りて。
お湯も張ってある。
温度が熱めなのは、わざわざ知念がおれのために準備してくれてたからなんだろう。
ほんとに、いいやつ。
お湯を頭から被っていたら、だんだんと冷静になってきた。


そういえば、知念は吸血鬼のやまだと１番長い付き合いだもんね。
おれより知ってることだってたくさんあるのかもしれない。
やまだの抱える秘密だって。


なんで、おれには話してくれないのかな。
おれも一緒に背負いたいのに。
やまだが隠してることを、受け止めてあげたいのに。
それはおれのわがままかな。
それとも、やまだにとってのおれに、そんな価値無い？


「いのちゃーんだいじょーぶー？」
「ふぇ？うーん！」


お風呂場の外から声がかけられた。
長いこと入っていたみたい。
そろそろ出なきゃ。


お風呂からあがると、おれのために用意してくれたタオルとか、服が置いてあって。
使わせてもらって、改めてお礼を言った。


「ありがと知念、ほんとに」
「うん」


ソファに座る知念の隣に腰かけて、バスタオルで頭を拭いて。
貸してーって言われて、素直に差し出したら知念がおれの背中側から頭を拭いてくれた。
お母さんにされてるみたい(笑)

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