本能(ymin)

＊ ページ15

「いのちゃん、ほら、話して？」
「……でも……」
「良いから。
言っておくけど、僕は誰よりもいのちゃんの味方だからね。
涼介よりもいのちゃんのことがよっぽど心配なの」


知念の言葉に、ぽろっと涙が流れてしまった。
ぐちゃぐちゃな気持ちでいっぱいいっぱいだったんだな、おれって。


「……ね、いのちゃん。
僕に話してくれたでしょ。
涼介に“ありがとうの意味のキス”されたって」
「うん……」
「それが、いのちゃんのことぐちゃぐちゃにしちゃったって、僕は思ってるんだけど。
当たり？」


こくん。
小さく頷いたら、やっぱり、って呟いた知念。
やっぱり、ってどういうこと？


「いのちゃんは……涼介のこと、どう思ってる？」
「……え……？」
「涼介のこと、好き？」
「そ、それは、だって、」
「メンバーとしてはもちろん好きって分かるよ。
そうじゃなくて。


涼介に、恋してる？」




……え？


こい……？


恋……って、おれが……やまだに……？


「そんな……わけ、だって、男だし！」
「関係ないでしょ、今時そんなこと。
涼介って普通にカッコいいし、優しいし、魅力的だよ。
涼介のことをどう思うのか、本当にただのメンバーだと思ってるのか、よく考えてみて？」


おれが、やまだをどう思うのか……？
それは当然知念も言った通り、カッコいいし、優しいし……。
でも、年下のくせにおれの頭を撫でたりとかしてくるし。
いつも余裕そうだし。
かと思ったら、おれのためにとか言って離れようとするし。
照れると可愛いとこあるし。


そういうの、見つける度に胸がきゅんってするの。


何より、彼の紅い瞳が。
何もかも、全部持っていかれちゃう。
ただただ、やまだのことで頭がいっぱいになっちゃう。


これは、好きってこと……？


そう、なの……？


「……たくさんたくさん、そうやって涼介のこと考えちゃう時点で答えは出てるんじゃない？」
「…………！」


知念の、言葉が。
すとん。って落ちた。


「ちね……どうし、おれ、どう、したら……」
「それは、いのちゃんが決めなきゃ。
僕に出来るのはここまでだよ。
進むのか、それとも諦めて無かったことにするのか。
どっちに決めようと、僕は味方になってあげる」


知念が、そう言っておれにぎゅっと抱きついた。
背中を、ぽんぽんって優しく撫でられて。
優しさがあったかい。




ああ、おれ、やまだが好きなんだぁ……。




自覚したら、ぐちゃぐちゃが少し晴れた気がした。

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