本能(ymin)

＊ ページ13

「だから、その……頻繁にあげたりとかは出来ないけど、たまになら……普通に、言ってくれていいし……」


よくよく考えたら何かすごい恥ずかしくなってきて最後は声が小さくなってしまった。
何も言ってくれない山田に、ちょっと不安になって。
顔を見たら、そこには、口元を手で隠しながら照れてる山田がいた。


「えっ」
「や、あの……ありがとう伊野尾ちゃん」


そのまま、すごくやわらかい表情で微笑まれた。
うわ、綺麗……。
ほんとに人間？って思ったけど違うわ吸血鬼だった。


「じゃ、じゃあ、かえる！！」
「あ、伊野尾ちゃん」
「なに、ん、んッ……！？」


帰ろうと背を向けたら、腕を捕まれて。
なに？って聞こうと再び振り向いたら、唇を塞がれた。
俺の方が背が高いから、後頭部を引き寄せられて。


え、うそ、なんで？


そんな疑問ばかりが浮かぶけど、舌を絡めてくるその動きについていくのに必死で。
あんまり慣れてなくて、息もしづらくて、ちょっと苦しい。


離れていった時には、もう頭の中はパニック状態。
そんなおれの様子を見たからか、山田はぽんぽんと頭を撫でて。


「ふふ、可愛いね伊野尾ちゃん」
「え……い、ま……」
「……ありがとうのキス、ってことにしておいて」


じゃあ、また明日。


そう山田に言われて。
ドアの外に送り出された。


え、は？なに？え？え？
どういう？
え、キス？
キスだよね？
キスした？
てかされた、うそ。
どうし、えっと、ありがとうって、ありがとうのキス！？
ありがとうでキスすることある！？
ないでしょ！！
え、吸血鬼ならでは？？
どういうことぉー！！？？


キャパシティが限界を越えて、とりあえずさっき電話を切ったばかりの知念に電話した。


「もももももしもし知念どうしよう！！！」
《何なのもう！！
今僕オンラインでクエストの真っ最中だから後にして！！》


がちゃ。


ツー、ツー、ツー……。


色々とショックが大きすぎる。
知念に見捨てられた……。
……いや、あきらめない。
知念には明日の仕事中に話を聞いてもらうことにしよう。


とりあえず、もう一度倒れる前に帰ることに決めた。


今日はもう、考えるのやめます。









END.

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作者です。
本能シリーズ第３弾！
いかがでしたか？
ちょっとずつ進んでる２人、かな。
吸血鬼設定楽しいけど、不定期に思いついたら書いてるので、ストップする可能性もあることだけお伝えしておきます…。
それでは！

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