夢と現実の(４) ページ41
・
「びっくりしたよ、まさかゆうたが夢ノ咲通ってるなんて」
「それは俺もだよ、先生に新しい転校生の名前きいたら、Aなんだもん」
マンションのエレベーターの扉が開き、外に出ながら、ゆうたに話をもちかける。
ゆうたはさりげなくドアに手を置き、私が出やすいように促してくれた。
そんな姿に私は、口元に手を添えて微笑する。
誰も知り合いがいなくて、いきなりプロデューサーとして招かれた。
いくらモデルをやってるとはいえ、不安がないわけではない。
でももう安心だ。幼なじみのゆうたがいる。
それに『
「それにしても……遅いな〜っ、アニキ」
「……ひなたは寝坊しないのに、何してるんだろうね」
「神出鬼没だから突然どっかに現れるかも」
ゆうたの大袈裟だと思われるような発言に、私は大きく頷く。
ひなたの事だ。きっと何かイタズラでも考えてるに違いない。
「それとも学校で待機してるのかも──」
と、私が踵を返した直後だった。
「だ〜れだっ」
ふっと目の前が暗くなり、薄い光が目にこぼれる。
にひひっ、と小さく笑う声。軽やかステップ。
こんなわかりやすいの、間違うわけないでしょ。
「寝坊したの？
私が告げた答えに、目隠しが解かれる。
二人の方を向くと、水色のヘッドフォンをした
「あちゃ〜、やっぱりバレてた？」
「ん〜、少しは騙せると思ってたんだけど」
「あんまり私を甘く見ないでよ、いつからの付き合いだと思ってんの」
私が腰に手をついて言ってる傍から、バタバタと逃げ出すひなた。
イタズラに付き合って上げただけ感謝しなさいよ。
「え〜、でもいつから分かってたの？」
「インターフォン鳴らした時、二人とも鳴らし方違うから」
「最初からじゃん！Aは手強いなぁ〜」
だからこそ、挑戦する価値あるんだけどねっ！
……なんて笑うひなたが、ヘッドフォンを外す。
ゆうたもヘッドフォンを外して、やっと『いつも通り』に戻った。
私はやれやれと呆れながら、早く行くよ、と歩を進める。
────見透かされたな、今年も。
そう思った直後の顔を隠すように、私は前を見据えた。
二人が私の前で『入れ替わる』理由を、挑戦と言っていた。
でもそれは、ほんの一部の理由にしか過ぎないのだ。
「……いつでもさ、俺たちがいるから」
「そうそうっ！今年も一緒に行かせてね」
『────大丈夫だよ、A』
私の辛さを、汲み取ってくれてるのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 481人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
莉緒(プロフ) - すいかさん» 返信遅くなりすいません！コメントありがとうございます！これからも面白いお話が出来るよう、頑張ります！ (2018年11月7日 22時) (
レス) id: 013457e9b7 (このIDを非表示/違反報告)
すいか - 面白いです!! (2018年10月24日 6時) (レス) id: 1cbfe77de4 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 愛姫さん» コメントありがとうございます！これから楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2018年1月25日 17時) (レス) id: 9db52594cb (このIDを非表示/違反報告)
愛姫 - いつも楽しみに見てます！！これからも頑張ってください！！ (2018年1月25日 13時) (レス) id: 43b6895a40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
