夢と現実の(１) ページ38
・
夢の中で私は、物凄く幸せだったと思う。
でもそれは、次第に儚く消えていって……目覚めた時には、もう何も思い出せない。
なのに私は、あの心地よい感覚に、身を預けてしまいたかったんだ。
｢ん……んん……｣
そんなこんなで、気がつけば朝が来ていた。
零れる日差しに背を向けて、もう一度瞼を閉じる。
しかし、いつもの様に鳴り響く目覚ましが、二度寝はさせまいと叩き起す。
渋々体を起き上がらせて、目覚まし時計を止めた。
午前５時３０分、いつも通りの、変わらない朝。
今日も変わらず残暑が鬱陶しくて、何も変わらない日常が────。
『いつまで人の顔見てるわけ？』
……変わらない、はずだった。
ずっとずっと赤信号のままで、変わらないんだと。
『あんたが腕引っ張るからでしょ、勘違いしないでよねぇ』
だから必死になって、あなたを呼び止めた。
でも、いつまで経っても変わらないし、振り返ってもくれない。
『あっつ……汗だくだからお風呂行ってくる』
ダメかもしれないと諦めかけた瞬間。
いつの間にか、信号の色は変わっていた。
『ちょっと、挨拶くらいしたら？……うん、いい子』
ススメと言わんばかりの顔で、私を待っていたんだ。
『────おはよぉ、A』
｢うわぁぁぁ？！な、ななななに思い出しちゃってんの私！ストップ！妄想……じゃないけど、妄想ストップ！｣
などと大声を上げて、数日……いや、ほぼ１週間前のことを思い出していた。
時が過ぎるのは早く、あの最悪で最高な出来事から、そこまで経っているのだ。
それなのに私は、いつまで経っても忘れられない。
｢泉……さん｣
自分のベッドの傍らを、手繰り寄せるように触れる。
当然だけど泉さんがいなければ、温もりもない。
あるのは、じっとりとついてしまった私の汗だけ。
それなのに、私は。
あの日の彼の温もりを。
あの夢のような瞬間を。
忘れられないままでいる。
｢応えて、ほしかったな｣
超えられなかった、後悔と一緒に。
｢……しまった、もう行かなきゃ……！｣
色々考えすぎて、普通に10分も無駄にしてる。
物思いにふけってる暇などなかった。
ご飯とか洗濯とかごみ捨てとか諸々、することは山ほどある。
それにもうすぐ……、大事な日だから。
｢……もうちょっとまっててね、お母さん｣
あと一週間、お母さんが誇れる娘に近づけるように。
今日も頑張るね、お母さん。
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莉緒(プロフ) - すいかさん» 返信遅くなりすいません！コメントありがとうございます！これからも面白いお話が出来るよう、頑張ります！ (2018年11月7日 22時) (
レス) id: 013457e9b7 (このIDを非表示/違反報告)
すいか - 面白いです!! (2018年10月24日 6時) (レス) id: 1cbfe77de4 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 愛姫さん» コメントありがとうございます！これから楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2018年1月25日 17時) (レス) id: 9db52594cb (このIDを非表示/違反報告)
愛姫 - いつも楽しみに見てます！！これからも頑張ってください！！ (2018年1月25日 13時) (レス) id: 43b6895a40 (このIDを非表示/違反報告)
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