6日目 ページ6
私の疑問など他所に、彼は一回転して床に着地し、服についた埃を払っていた。
Aさんの部屋が汚れる。
その行動を睨みつけていたら、その光る緑色の目と目があった。
「何やねん、言っとくけど、あいつはお前のやないからな」
「何の話ですか、というか、人の部屋に無断で侵入とは、礼儀がなってないんじゃないですか?」
「煩いわ、新米のくせに、お前なんかより、俺の方があいつのこと知ってんねん、愛だって強い自信あるで?」
「自信があるだけですか、私なら断言しますけどね」
煽りに煽りを返せば、彼は眉間にこれでもかというくらいシワを寄せて、さらに睨みつけてきた。
私はその姿に怖気付くことなく、彼に背を向けて、Aさんと自分の分のお茶の用意を始めた。
「あ、それAの好きなやつやん」
「いちいち知ったかしなくていいですよ、ゾムさん」
「知らんかったからって僻むなや、クソ新米が」
横から覗くようにして見られる。
彼女の部屋に無断で入ったことも、まるで毎日彼女を観察していたとでもいうかのような口ぶり。
この茶葉は、私がこの前、知り合いから送られてきた新発売のものだ。
飲んだのもつい数日前、Aさんがゾムさんみたいな人にわざわざ紅茶の話を持ちかけるとも思えないし、2人の話にそんな話が出てくるとも思えない。
「ストーカーしている人が幹部なんて、恐ろしい国ですね、ここは」
「必死に同性愛バレへんようにしとる滑稽な女に言われたないわ、それに、俺はAの身に何か起こった時にすぐ助けられるように監視しとるだけや、お前と一緒にすんなや」
「同性愛とは人聞きの悪い、私は彼女だけです、あの人以外にこんなにも心が動くはずがない」
いつもの心の内を彼にぶつければ、心底気持ち悪いとでも言いたげな顔をされた。
ナイフの1つや2つ投げつけてやろうとも思ったが、部屋の扉が開き、Aさんが帰ってきたのでやめた。
Aさんを見れば、私とゾムさんを交互に見渡した後、ため息をついた。
「A!今日も綺麗やな、なあ、明後日休みやろ?2人で街でも行かへん?欲しい言うてた服買ったるで」
『…ゾム、ダクトから人の話を盗み聞きするのはやめて』
「盗み聞きなんてしてへんって、ちゃんと通りすがった時に聞いたんやで?」
『ベッドの中で、寝る前だから小声で話していた内容を?』
「…」
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません!書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません!走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました! 本当に好きです! (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…?感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月9日 19時