47日目 ページ47
彼らは、月を眺めていた。
私は、空になった瓶を床に捨て、その大きな背中を見つめた。
私をここに連れてきてくれた彼と。
間違いを教えて叱ってくれた彼。
「…ある島国では、愛する人を月にたとえて、告白をするのだそうだ、知ってるか、A」
『…いいえ』
「知らなくて当然だ、お前に本来植えつけられるべき知識は俺らがわざと奪ったんだからな」
『…十分すぎるほど、私は貴方達に沢山のものを教えてもらった、奪われてなんかいないわ』
「…何で笑えるん、憎いんやろ、俺らが」
窓枠にもたれるように俯き気味に話すグルッペンと、私の目を逸らさずに見て、怒りを含んだ声でそう言ったトントン。
まるで、私の過去と未来を見ているようだ。
俯いて、いつまでも貴方達に頼るのはいい加減やめる。
ちゃんと、前を向いて、伝えるよ。
『愛してた、これ以上ないほどに』
「…何故だ」
『理由なんていっぱいありすぎて、嫌いになる理由がいくらあっても、みんなを嫌いになるには足りなさすぎるよ』
「…俺らは、お前を不幸にしたんやぞ」
『それ以上の幸せを、みんなに貰ってたって、やっと気づいたの』
「お前に酷いこと、たくさんしただろ」
『私だって、いつまでも逃げて自分を守ってた』
「…人を殺めたんだ、私欲のためだけに」
『私も、終わらすためだけに愛した人を、手にかけてる』
「っ…優しいお前に寄ってたかってつけこんでっ！無意味なこと繰り返して沢山お前から奪ったんだ！今だってっ、お前がそう言うのをいいことに安堵しそうな自分がいるっ…！」
感情的にそう叫ぶトントン。
青い彼が言っていたっけ。
心のない奴らも、人に興味のなかった奴らも、全員君を好きになったんだよって。
その中でも、1番必死に追いかけていたのは、まぎれもない、私を最初に拒んだ彼だった。
『…それでも、愛してるの』
精一杯の笑顔でそう言えば、グルッペンは可笑しそうに大声で笑った。
まるで、戦争で追い込まれたかのように。
楽しみのできた、子供のように。
「欲張りやな、A」
そう笑う彼は、笑い泣か、それとも悲し泣か。
一粒涙を零した。
それにつられるように、トントンも微笑みながら泣いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
