46日目 ページ46
大分少なくなった中身の瓶を見て、しみじみと彼らの死を実感する。
後悔というよりも、罪悪感にも似た、彼らへの残る愛情に胸が締め付けられる。
それでも、足を止めては駄目だと、無理矢理この足を動かした。
「…やっと来た」
「やっとかいな、何が嬉しくて男二人で月見あげなあかんねん」
「それこっちの台詞なんすけど」
いつも通りすぎる彼らの会話に、私はつい唖然と立ち尽くしてしまう。
そんな私を見て、優しく微笑んだ彼らは、その大きな手で、今までにされたこともないほどの優しい手つきで頭を撫でられた。
労わるような、慰めるような。
そんな手つきで。
「…そんな悲しそうな顔、しんとってくださいよ」
泣いては駄目だ。
そんな弱さを見せてしまっては、彼らにまた、無駄な心配と罪悪感を背負わせてしまうじゃないか。
どうか、溢れないで。
「お前は強いし、その上優しいから…この選択を取ってくれたんよな、ありがとう」
その言葉に、揺らぐ瞳を見透かされている気がする。
本当は、まだ心の奥底で、淡い期待と、共に育つ幸せを願ってしまっている。
馬鹿だな、と自分をどれだけ嘲笑っても、結局、彼らを嘲笑うような気持ちになって、自己嫌悪に陥るのだ。
強くて優しいのは、貴方達じゃないか。
『…どうして、怒らないの、私、自分勝手に、貴方達を殺してるだけなのよ…』
「勝手なら、そんな悩まんやろ」
『違う…悩んでるふりをしてるだけ…自分に都合がいいから、そうしてるだけ…』
「都合良くて、そんな顔する人いませんよ」
『…貴方達を、不幸にしてしまった』
それが、1番の罪だ。
まだ先の長い彼らの人生の幸せ全てを、何度も何度も、どれだけ輪廻を回っても、私は踏みにじってしまった。
頰を叩いて、怒鳴って、死んでしまえ、消えてしまえと言われた方が、どれだけ楽なのか。
それなのに、彼らは私を優しく突き放すのだ。
「幸せや」
『嘘よ』
「嘘ちゃいますよ、ほんまに、幸せです」
『…どうして』
明るく輝く月は、二人の間にやってきた?
そして、どんなに美しいと称されるものよりも、彼らは綺麗な言葉を残した。
「お前に出会えただけで、これ以上にない幸せや」
「それを欲張って手の内に入れようとした、俺らが悪いんです」
『…私も、沢山欲張ったの、全部、捨てれなかったの』
「ええねん、無理に捨てんでも」
「だから、それを、最後まで忘れないで、大切に持っておいてください」
いつか、また会った時まで。
130人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません!書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません!走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました! 本当に好きです! (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…?感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月9日 19時