28日目 ページ28
「Aさん！Aさん！！」
名前を呼んでも応答がない。
完全に気を失っている。
家族も故郷も、その上恋人まで殺されているんだ、精神的にも辛くて仕方ないだろう。
無理矢理いろんなことをされたとも言っていた。
彼女からすれば、彼らの急な裏切りにも似た行為に、酷く混乱し、絶望したことだろう。
そんな環境の中で、洗脳されなかった彼女は、どれだけ意志が強いのだろうか。
「大丈夫ですか？」
「っ…！？」
「あ、すみません、通りすがったもので、驚かせるつもりはなかったんですけど…」
全く気配がしなかった。
物音１つもしなかった。
驚きのあまり大袈裟に振り返ってしまった。
男はこんな森に来ることなんてなさそうな、派手ではないが、都会にいそうな服装をしていた。
微かに香る煙草の臭い。
嫌でもあの人たちの中の数名を思い出す。
「…上司が移動中に倒れてしまって、休めるところを探してるんですが」
「俺の家でよければ、ここから近いし、2人くらいだったら休める場所も十分にありますよ」
「…貴方が安全な人とは限らない」
「それは俺も言えることですから、それに、この森は夜になると狼が出る、野宿はお勧めしませんよ」
「……すみません、お願いします」
今の所害はなさそうだ。
狼が出るとなれば、流石に彼女の看病をする場所の確保も難しくなって来る。
この辺りに詳しいのであれば、話を聞くのも１つの手だろう。
「…あの村は、一体なんなんですか？飢餓ってわけでもなさそうですけど」
「さあ、俺はあそこに住んでなかったので、詳しいことは知りません」
「でも、近くに住まわれてるんですよね」
「ひっそりとした村だったんで、正直、存在自体最近知ったようなものです、まあ、強いて言うなら、あんな風になったのはそんな前のことじゃないってことですかね」
「…へぇ」
ってことは、彼女が故郷であるあの村を訪ねることがわかった上で、先に始末した、ということも有り得るのか。
そうだとしたら、ここまで早く手を打たれているということになる。
この考えが完全に正しいとは言えないが、可能性はないわけじゃない。
そうなれば、この男も、安全とは言い難い。
「そんな警戒しなくても、いくら彼女が綺麗だからって、手なんか出しませんよ」
「…よく分かりましたね」
「顔に出てたので、でも、俺はそういう素直な態度を示す人が好きですよ」
「…」
何だか、気に食わない。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
