1日目 ページ1
(…女神様だ)
一目見てそう思ったのだ。
風によって揺れる髪から香る花の匂い。
崩れることを知らない整った顔。
穢れなど微塵も感じさせない丁寧な口調。
人々の心を浄化させてしまうのではないかと思うほど凛と澄んだ声。
軍人であるからか、その軍服に包まれた身体は健康的に、かつそこらの女性など敵にも見ないほどの美しさだった。
『我らを勝利へと導くであろう、グルッペン・フューラーに、ぜひとも皆様のお力をお貸し下さい』
よく通る声だった。
私が彼女を見かけたのは、彼女が戦争を促す演説をしていた場所から、遠く離れていたところだった。
友人と出かけている最中に、その姿、その仕草、その全ての美しさに目が奪われた。
きっと、他の大勢の人々もそう。
演説の内容でも、戦争に対する不安でも、反抗でもなく、ただただ彼女に見惚れていたのだ。
何故戦争狂の総統様が支持されているのか、その時まではわからなかったが、その一瞬で、彼女の力なのだとわかった。
「綺麗な人ね…女の軍人さんなんていたんだ」
「…私、教師になるのやめる」
「え？」
「私、軍人になる」
推薦をもらっていた国一の学校の受験を急遽やめ、私は軍人学校を受けた。
女性の入学は認められていなかったが、それまでの身体能力と頭脳をアピールすれば、特別に試験を認められ、見事合格した。
その異例の女性入学は、私を合わせて2人、あの時の彼女だけだった。
周りは皆男性であり、女である私に慈悲や配慮など全くなかったが、それでも、彼女に近づきたくて、いくつもの壁を超えていった。
そして、ある日転機は訪れた。
「我々軍幹部、A様がいらっしゃったぞ！」
「急げ！すぐに整列しろ！」
妙に慌ただしく動く彼ら。
その荒い息と真っ赤に染まった顔は、どう見ても走っただけで起きたものではない。
私は、全速力で、走り、何が何でも彼女に会おうと窓から飛び降りた。
それが、彼女からしたら、私と初めて会った時のことだ。
視界に映る彼女の姿に、大きな怪我こそなかったものの着地に失敗して、顔から芝生の上に落ちてしまった。
痛みなんて目もくれず、顔を上げて、座り込んだまま彼女を見上げた。
『…窓からの移動は危険ですよ、ハリス・シイナさん』
それが、彼女から贈られた、最初の言葉だった。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
