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『…お守りやわ、うち』

「俺もやわ、ここの神社のやんな」

『うわ…理由覚えとる…』

「一緒の理由なんとちゃう?ほら」


鬱は、お守りの紐を解くと、中から幼い字で私の名前が書かれた紙が出て来た。
ゆっくり顔を上げて、鬱の顔を見れば真っ直ぐとした瞳で見つめられた。
私も、ゆっくりとお守りの中を見れば、見覚えのある字で、目の前の彼の名前が書かれた紙が出て来た。
この神社の縁結びのお守り。
お守りの中に結ばれたい人の名前を書き、大切に取っておく。
この話を聞いた時、嬉しくて仕方なくて、お祭りの日に少ないお小遣いで買ったのだ。


『効果あったんやろか』

「さあ、お守りなんてそんなもんちゃうの、効くか効かないかはわからへんからな」


鬱は、取り出したそれぞれの当時の宝物を穴に戻していき、終わると、手を差し伸べて、私を立たせてくれた。
すると、ちょうど大きな音が背後でした。
振り返れば、光がちらちりと舞っていた。


「花火…もうそんな時間なんや」

『…なあ、鬱』

「なに?」

『うち、もう、鬱以外の人好きになれんと思うねん』

「うん」

『10年以上、好きやったんやから、勘違いでも恋に自惚れてるわけでもないねん』

「せやな」

『…だから、その…』


手離したくない。
必死に追いかけた君を、繫ぎ止める、明確な印が欲しいのだ。
証明したい。
法とかいう、私たち人間の中では大きな縛りを作っているそれで。
しかし、まだ成人もしてなければ、付き合って少ししか経っていない。
だから、こんな約束は、子供の約束くらい意味がないのだ。


『…ずっと、鬱も好きでいてな』


法で縛られていても、私自身で君を縛り付けるようなことはしたくない。
大丈夫、だって、10年以上、君に片想いをしていたようなものなのだから。
捨ててもいいよ、邪魔になったら、突き離してもいいよ。
だから、言葉だけではそんな戯言を呟かせて欲しいのだ。


「…俺も、どんなことがあっても、A以外を、こんだけ好きにはなれへんよ」

『…そうなん』

「せやで、だから、夢みたいやねん、この瞬間も」

『…』

「Aから告白させてもうたんは正直、心残りやからなぁ…」


小さなリップ音が聞こえて、いつもは胸が酷く高鳴るその行為が、今はとても胸を締め付けて仕方ない。
苦しい。
幸せなのが、苦しい。
そのキスの味は、ほのかにしょっぱかった。

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作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月4日 4時

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