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「そうなんかぁ…鬱もとうとう結婚かぁ…」

「あんた耳聞こえんの?毎日怒鳴り過ぎて難聴なってもうたかな…」

『おじさんほんまにこっちまでくるんやけど』

「おかんティッシュとって、拭くわ」

「いつ付き合うんやろって思ったけどなぁ…そっかぁ…とうとうかぁ…」

「あんたほんとに大丈夫?」

『ギリギリセーフやったわ、ありがと』

「おかん頼むからそれ以上親父のこといじめたらんとったってよ、Aも」


そう指摘すれば2人とも素直にすぐ辞めるのだから、強く怒れない。
上手いこと怒られない術を知っている。
親父はやっと気が付いたのか口の中の渇きを潤すようにお茶を一気に飲んだ。


『なあおじさん』

「どうした娘」

「それまだやるん?」

『いつ付き合うんやって思ったんやろ?何で?』

「そりゃなぁ、Aちゃんはよう1人で遊びに来とったし、えらいアピールしとったからなぁ…それに、息子の本命なんか、聞かずとも分かるで」

「やんあなた格好いい」

「そうかい母さん、じゃあ今日の夜ご飯は唐揚げがいいな」

「せやな、今日は美味しい秋刀魚さんやで」


感動的なことを言ったと思えば、おかんとのコントのせいで台無しになった。
がくりと落ち込んだ親父は置いといて、Aのアピールには全く気がつかなかった。
いや、まさか?とは思ったことは何度かあったが、有り得ない、と振り切ってしまっていたから、信じられなかった、の方が正しいのだろう。


「まあ、仲良くやんなさいな、喧嘩はあんましちゃかんよ、偶にやで、偶に」

『喧嘩か…したことないやんな、そう言えば』

「シッマ達とはやったことあんねんけどな」

『…嫌われたくなかったからかな』

「そうなん?」

『好きな人には嫌われたないやろ、言動とかは気をつけててんで、あれでも』


代表的なアピールと言えば、特別優しくするとかだろうけど、Aに対してあんま優しくないと思ったことがないから、そこは全く気づかなかった。
逆に、喧嘩しないのが少し寂しいと思ったことが何度かあったくらいだ。
シッマ達にはそのままぶつかりにいくのに、俺にだけは遠回りなんやもん。


「受け止めたんで?」

『今はまだええよ、怒ることないもん』

「そっか、俺も今はないわ」

「…あんた、鬱がAといちゃついとる、親のいちゃつき見た時みたいな気持ちやわ」

「例えが生々しいぞ母さん」


怒りたいことといえば、親がコントを辞めてくれないことだろうか。

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作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月4日 4時

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