検索窓
今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:32,797 hit

16 ページ16

『…誕生日、どうしようか』

「…?あぁ、せやな、今年は空気読んで2人にしてくれるんとちゃう?」

『一緒にいてくれるん?』

「当たり前やろ、何でもしたるで」

『…何でも?』

「何でも」


"何でも"。
その言葉に、どこか複雑な気持ちになる。
やっぱり、鬱はちゃんと尽くしてくれる。
適当にあしらったりだとか、そんなことは全くしない。
何聞いても優しく答えてくれる。
でも、それって、誰にでも、やんな。


『何でもかぁ…』

「して欲しいことでもあるん?」

『…うーん、沢山あるわ』

「沢山かぁ…部屋の片付けとか言わんとってな」

『自覚あるならしぃや』


別に、そんなに言うほどでもないと思う。
生活感があるだけで、別に汚いわけでも散らかっているわけでもない。
彼は、意外とそういうところは、自分に対して厳しいのかもしれない。
昔から、テストの点数も特別悪かったところは見たことないし、教えてって言えば、わかりやすく教えてくれた。


『鬱は、して欲しいことないん?』

「俺は、側におってくれるだけでええわ」

『ほんまに?』

「まあ、強いて言うなら部屋の模様替え手伝って欲しいな」

『模様替えするん?』

「うん、家具、もう結構古いねん、実家から引っ張り出してきたもんやから」


いつか、鬱と同棲したり、家庭を築いたりするのだろうか。
まだまだ先のことなのに、こんなにも胸が弾むくせして、その分だけ不安が募っていく。


「…でも、模様替えはまだ先でええわ」

『ええんや』

「どうせするなら、一緒に住む時にしよな」

『…おばさんのご飯、久しぶりに食べたいわ』

「また今度行こか、きっとおかんも会いたがっとる」


上手く、話を反らせただろうか。
顔に熱が募って、反射的に、彼と繋いでいた手を強く握った。
そうすれば、ちゃんと、握り返してくれた。
本当は、して欲しいことなんか、1つしかないんやで、鬱。


『おじさんと、お酒飲める日がすぐ来るんやな』

「あの人すぐ酒進めるからな…やっと一緒に呑んでやれるわ」

『…きっとすっごい美味しいで』

「悪酔せんといてな?」

『そん時はおぶってって』


まだ先のことやし、言わんといてあげるわ。
でも、いつかそん時がきたら、うちの我が儘、聞いてな。

17→←15



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
118人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月4日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。