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『バイトしたいんやけど』
「…どしたん、急に」
『欲しいものあんねん、ちょっと高いやつ』
「何でも買ったんで?」
『意味ないねん、それじゃ』
恋人だからか、わざわざ決まってもいないのに報告してくれるところが律儀だ。
何が欲しいのか聞けば、エミさんの誕生日プレゼントを買いたいのだと言う。
そう言えばもうすぐだったか。
来年になれば皆で酒を呑めるのだが、未成年の飲酒は後が怖いので、呑んだことはない。
親父のを少し拝借したことはあったが。
『エーミール、大人っぽいからそこらへんの雑貨屋じゃなんかしっくりこぉへんねん』
「しかも異性やしな、今まではどうしてたん?」
『ネットで調べとったけど、そろそろネタ切れやねん…』
困ったように、貸したパソコンと睨めっこしてるA。
あまり悩んだ姿を見たことが無いため、新鮮味を感じながらも、手助けしようと横から覗き込んだ。
Aが見ていたサイトは、紅茶用のセットだったり、服だったり、まだジャンルも定まっていないようだ。
「エミさんやったら、何でも喜んで貰いそうやけどな」
『せやねんけど…何でも同じリアクションやから、何がええかほんまにわかれへんねん』
「そう言えばエミさん、好きな小説家の新刊、買いたいけど時間ない言うとったな」
『…ほんまに?』
「本やったらわざわざバイトせんでもええしな、また今度買ってないか聞いてみよか」
『ん、せやね』
Aは、肩の荷が下りたのか、パソコンを閉じて、すぐに伸びをした。
そして、のそのそとお馬さんの姿勢で近づいてきたかと思うと、俺の足の間に割り入ってきた。
身体を預けるようにして、背中を胸元に預けられた。
困ったことに、この位置からだと服の中が軽く見えてしまう。
へんな気を起こさないように、Aのお腹あたりに腕を回しぐっと引き寄せて、自身の顎をAの頭の上に乗っけた。
『鬱、体温高いな、あったかいわ』
「Aは冷え性やからな、指冷たいわ、部屋ん中寒ない?」
『大丈夫、寒くても、鬱にあっためてもらうわ』
Aは、自身の冷えた手を、自身のお腹と俺の手の間に入れて、あったかい、なんて、顔を緩ませながら呟いた。
うん、今日もAが可愛い。
飽きもせずに同じことを考えて入れば、同じように飽きもしれない着信音に嫌気がさした。
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作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月4日 4時