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「バニラアイス買ってこようと思ってたんだけど、忘れちゃった、一緒に買いに行こ？」
「Aちゃん…」
藤井くんがやっと、声を出した。
「こ、たき……
きのう、また明日って言ったじゃん、
約束したじゃん！！」
「Aちゃん！！」
藤井くんに後ろから抱きしめられる。
嫌だ。
まだ、小瀧としたいことたくさんある。
話せなかったこともたくさんある。
好きって伝えられてない。
「のぞむ…」
小瀧がずっと呼んでほしいって
言ってた下の名前を呼ぶ。
『え？！いま望っていった？！』
『聞き間違いかもしらん、
もう一回言って！！』
いつもそうやって喜んでくれるのに。
なんで寝たままなの。
小瀧。
小瀧。
私、小瀧がいないとダメなんだよ。
「Aちゃん…
これ、望の荷物から出てきたんやけど、
受け取ってくれるかな？」
小瀧ママから渡されたのは、
ちょっとぼこぼこしている
ピンクにラッピングされたものだった。
「これ…」
袋を開けると、
happy birthday！
と書かれたカードがでてきた。
あぁ、そうだ。
今日は私の誕生日だった。
「Aちゃん、
この手紙、昨日望頑張って考えててん
読んであげてくれへん？」
藤井くん、知ってたんだ。
もしかして…
小瀧の忘れ物ってこれのこと？
私へのプレゼントを取りに帰らなかったら、
小瀧は事故に巻き込まれずに済んだ？
震える手で封筒を開ける。
『Aちゃん
誕生日おめでとう。
俺、Aが好き。
付き合ってください。
生まれてきてくれてありがとう。
プレゼント、
キモいかなって思ったんやけど、
お揃いのブレスレットにした。
つけてくれたら、嬉しい。
望より』
私たち、
同じ気持ちだったの？
「小瀧ママ…」
「ん？」
「小瀧の忘れ物って
何だったかわかりますか？」
「うーん…分からんなぁ、
バタバタしとって聞かんかったから」
「そう、ですか」
しばらくすると、
いろいろやらないと
いけないことがあるらしく、
私と藤井くんは学校に戻るように言われた。
「もしかして、望が取りに帰ったの、
そのプレゼントやと思ってる？」
藤井くんのその言葉にビクッとしてしまう。
「え、」
「Aちゃんのせいやないから。
急すぎて俺も受け入れられへんけど…
お通夜とお葬式、行ける？」
「…うん、行く」
学校に戻る気にもなれず、
2人で家に帰った。
藤井くんは、家まで送ってくれた。
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作者名：ひよこまめ | 作成日時：2021年1月14日 13時
