わかってない(黄) ページ11
あなたside
彼氏の淳太くんに
「同僚に紹介したいから」と言われて、
一緒にご飯に行くことになった。
淳太くんと仲のいい同僚の人は
桐山さんと言うらしい。
「ほんまにAはな、
可愛いし優しいし、気ぃ利くし、
めちゃくちゃいい子やねん」
「ちょっと淳太くん酔いすぎ…！
桐山さん困ってるやん！」
「いや？普段から惚気聞いてるから
困ってへんよ(笑)
ここまでデレデレなん見るのは
初めてやけどな(笑)」
普段から惚気てるんですか…
恥ずかしくなってしまった。
だって、淳太くんが言ってくれる
可愛いとか優しいとか、気が利くとか。
そう言ってくれるのは嬉しいけど、
全部淳太くんに嫌われたくなくて、
つくった嘘の私で。
言ってしまえば、
本当の私やないんやから。
淳太くんの中でつくりあげられた私。
本当は、仕事ばかりで
なかなか会えなくて寂しいってことも、
もっと抱きしめてほしいってことも、
淳太くんはわかってない。
淳太くんはそのまま
机に突っ伏して寝てしまった。
「すみません、お水ひとつ」
店員さんを呼んで、お水を頼む。
「ほんまに気ぃ利くなぁ
淳太くんが羨ましいわ」
桐山さんが眉を下げて笑う。
「いえ、淳太くんに好かれたくて
頑張った結果がこれです。
まだちゃんと、
自分を出せてないって言うか…
嫌われるのが、怖くて」
そういうと、
桐山さんはキョトンとした顔をした。
「言ったらええやん。
大丈夫、そんなんで淳太くんは
Aちゃんのこと
嫌いなったりせぇへんよ」
なんだか、桐山さんの方が
淳太くんのことを知り尽くしてるみたいで、
ちょっと悔しいなぁ(笑)
それから、桐山さんに
玄関まで送ってもらった。
「桐山さん、タクシー代まですみません。
ありがとうございました！」
「ええよ、
明日淳太くんに請求するし(笑)
おやすみ〜」
「おやすみなさい。
淳太くん〜、着いたよ？」
淳太くんを肩に担いで、
揺すって起こす。
「ん〜、A〜」
寝ぼけてるのか、
そのまま軽くキスされる。
本当はもっとキスもしたい。
こんな欲深い私のことも、
淳太くんはやっぱりわかってない。
いや、淳太くんのせいにばっかりして、
言おうとしてないのは自分やんか。
桐山さんに言われたように、
きっと淳太くんは受け入れてくれる。
明日、目が覚めたら
本当の私はこんなんなんやでって、
ちゃんと淳太くんに言おう。
そしたらもっと、
理想の恋人になれるかな。
あいみょん / わかってない
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作者名：ひよこまめ | 作成日時：2021年1月14日 13時
