_今 夜_ _JIN_

嘘 ページ17

『んもう、なに？今日はどうしたのよ』



「うわ、出るって思ってなかったからびっくりした」



『…なんのためにかけてきたの』



「ん？うーん、Aの声聞こうと思って」



『いくらでも聞かせてあげる。何歌って欲しい？』



「A、歌は下手くそだから聞きたくないな」



『次会った時を覚えときなさい』


.



あの日から毎日電話をしている。



かけるのは決まって夜の11時。



仕事から帰って、ご飯食べてシャワー浴びてゆっくりする時間って聞いたのを覚えてるからこの時間にかけるくせもついたんだと思う。



いつもみたいに電話をかけて、でももう1週間も経つからそろそろ無視されるかな、なんて思ってたにも関わらず数コールで出てくれた。



不満そうなこと言ってるけど、言葉の端々に感じる楽しげな笑い声にほっと息をつく。



電話してたら、この時間がずっと続けばいいなんて、そんなことをぼんやり考えてしまう。



明日も朝がはやいから早く寝な、なんて弟達にいえたものじゃない。


なんだかんだ僕が1番遅くまで起きてて、君の声を聞こうとしてしまう。



「最近どう？」



『うーん、まぁまぁかな。ソクジナは？アルバム準備は順調？』



「4月を楽しみにしててよ」



『ネタバレしたら怒るからね』



「しないよ！あぁ、そう言えばこの間弟くんと会ったよ」



『そうなの？…何か言ってた？』



「ううん、挨拶だけ。…なんか言うことあるの？」



『特にないけど。ほら、弟が外でどんな顔してるのか気になるじゃない？』



「うーん、そんなもんかなぁ」



『そう、そんなもんなの！』

2→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す