_今 夜_ _JIN_

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「…」



最近咳がではじめた。



最初は風邪の時みたいに、ケホケホと喉に引っかかる程度だった咳は、毎日少しずつひどくなっていった。



数分咳が止まらなくなって息が出来なくなったり、相変わらず眠れない夜はさらに眠れなくなったり。



そして今日、この数日間のように咳が止まらなくなったと思ったらなにか苦いものがせり上がってきた。



「…っぐ」



ごぽっと吐き出したのは血の塊。



喉の奥がびりびりと痛くてじんわり涙が滲む。



その日を境にして、赤色を見ない日はなくなったのではないだろうか。



前電話が来てから1ヶ月と少し、とても久しぶりにソクジナと話した。



その日も通話終了のボタンを押した瞬間に押さえ込んでいた咳がではじめて、当たり前のように咳には血が混じりだす。




体を丸めて、少しでも咳が響かないように、と両手をにぎりしめたら背中に触れる暖かい感触。




「…ヌナ」




「…ッ」




「大丈夫、俺ここに居るから、ゆっくり息して」




最近こまめに顔を出す弟の、私の背にあたるその大きな手のひらの温かさに安心して目を閉じる。



息をゆっくり吸って、咳が出ないことを確かめてゆっくり吐き出す。



辛い時間が終わった瞬間は、どうしていつも涙が出てきてしまうんだろうか。



堪えきれずに零れた涙がひとつぶ、握りしめた両手の上に落ちた。



「ヌナ」



「ごめんね、ヌナも病気には勝てないみたい」




「…ヌナ、ソクジニヒョンに言おう」



「もう、そんなことしてソクジナがここまで来たらどうするのさ。パニックだよパニック」



「……冗談言える状態じゃないくせに」



「んふふ、ヌナの体はヌナにしか分からないのよ？いつでも余裕で冗談くらい飛ばしてあげる。」

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