客人*ルキノ*(結晶体) ページ33
「ヒ、ヒ、ヒ、なに、何この化け物。」
「化け物とは失敬な。私はれっきとした学者であり教授だぞ。…まぁ、こんな姿ではそう思うのも無理はないが。少し失礼。」
何と狭い部屋!と大声で笑いながら私の椅子にどっかり座り込む蜥蜴の形をした二本足で立つこの化け物。
身体はキラキラと輝く結晶の様な石で出来ているようで、蝋燭の光がチカチカと反射している。
その化け物はキョロリと辺りを見回して「紅茶はないのかね。普通客人が来たらお茶を出してもてなすものだろうが。」と不服そうに唸った。
「こ、こん、な所にある訳ないじゃ、じゃない。」
「それもそうか。うぅむ、それにしても狭い。狭すぎる。君はこんな部屋で満足なのか?」
「私は貴方とちが、って小さい、から。」
「ハッハッハ!自分が小さいという自覚があるのか!その通り、君と私では違う。何もかも。勿論頭の良さも。」
皮肉のつもりで言った言葉が意外とツボにハマったのか、鋭い牙を剥き出しにして大笑いをする化け物。ビタンビタンと床に打ち付けられる尻尾の恐ろしさといったら!いつ自分に向かって振られるか分からない大きな刃物を見ている気分になる。
…院長がおかしな実験をしている、と噂が立っていたが、もしかして彼はその実験体で…今まさにそのおかしな実験から逃げてきた所なんじゃないか?そうでなければこの恐ろしい存在の説明がつかない。
そうと決まればするべき事は1つ。
ナースコール。
「よけ、避けて、避けてよ、!」
「嫌だね。どうせナースコールでもして私を連れ戻させようとしているんだろう。生憎だがね、私は奴ら如きに捕まる様な存在ではないし、そもそも逃げてきた訳じゃない。」
「そんなぁ。」
「あからさまにガッカリした顔をするな名探偵。君の推理は世界一だぞ。ただ相手が悪かった。」
ベットに備え付けられているナースコールのボタンを押そうと格闘するも、化け物の巨躯にとっては蠅も同然。まるでハエたたきに向かって突進していく蠅の様。
無様に転がされた私の傍に屈んで「なぁ、1つ良い話があるんだが。」と楽しそうに話し始めた。
「こんな肥溜めからオサラバしたくないか?外の世界に出て自由に生きたいとは思わないか?」
「…自由に。」
「そうだ。実はな、今友人がそういった素晴らしい計画を建てているんだ。是非君にも参加して欲しい。」
「…嫌!脱走でしょそれ。院長が怖いから嫌!」
「悪いね、この話を聞いた時点で君も共犯だ。」
化け物が牙を覗かせて笑う。
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すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます!!! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです!夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…!キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…!新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします!これからも陰ながら応援しています…! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……!!これからも更新頑張ります〜! (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2019年6月9日 18時