森の中*2* ページ30
「う、わ、」
「あ?どうしたんだよ〜、さっきまで喋れてたじゃねぇか。オイ、A〜。」
「誰」
「あそっか!俺なぁ毒キノコ!つっても毒無しの出来損ないだけどな。だから安心しろよ!友達になろうぜ!」
「なんで私の名前知って、るの。」
「お前はこの森じゃ有名なんだよ。友達になろうぜ!」
な?とやたら友達を連呼してくる彼に困惑しつつ握手を返す。
ヤッター!と飛び跳ねて喜ぶ姿はまるで子供の様で、もしかしたら私と同年代なのかもしれない。と思考を巡らす。
「お前さぁ、案内人に頼むの止めろよ。アイツ愛想悪ぃじゃん!」
「そうだよね、でもフクロウさんが…」
「フクロウ!?お前あんなのと一緒に居たのかよ!?アイツも胡散臭ぇ奴だぜ!もう関わんなって!」
「え、でも…私、薬草取らないとダメで…」
「薬草なら農家が育ててるハズだから一緒に行くか?あの子はすんごい良い子だからな!」
グッ、と親指を立てて「早く来いよ!」と走り出す彼の背中を息を切らして追う。
思いっきり森の中を走ってみると、次々と移り変わる景色がまるで絵本の様で、自分が空想の世界の登場人物になったかのような気分に浸れて楽しかった。
「あっ!止まれーッ!」
「わ、あっ、」
「は?」
「えっ何、」
余所見をするな、という点では案内人の彼女が正しかったらしい。
毒キノコの彼が慌てて私の方に手を伸ばすが間に合わず、私はそのまま土へと真っ逆さま。
「…は?」
「あの、これには訳があってさぁ…」
「貴女大丈夫?」
「うん、平気です…ごめんなさい…。」
華奢な腕に抱えられて何とか土から出る事ができた。
腕の主は可憐な女の子、そして先程からこちらに冷たい視線を投げかけている緑色の女性がいた。
「農家ちゃん、コイツに薬草分けてやってくんねぇかな。ばあちゃんがヤベェんだってよ。」
「そんな事まで知ってるの。」
「えぇ勿論よ!どの種類が欲しいのか教えてくれる?」
「毒キノコくん、森の中を走らないでって言ったわよね。これで何度目よ貴方…」
「ゴメンって薬草取りのオバサン!」
「刺すわよ。」
チャキ、と何やら注射器の様な物を取り出す彼女に慌てて謝り倒す彼。
未だに信じられない光景にポカンとしている私を置いて、3人はさっさと小屋の中に行ってしまう。
私も入ろうか、と足を1歩進めた時
「後ろは振り返るなと言ったのに。」
ぎちり、と首に縄を掛けられその場から1歩も動く事ができなくなってしまった。
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すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます!!! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです!夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…!キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…!新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします!これからも陰ながら応援しています…! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……!!これからも更新頑張ります〜! (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2019年6月9日 18時