森の中*1* ページ29
「こんにちは、フクロウさん。」
「やぁ君か。よく来たね。お祖母様の具合はどうだい?」
「あまり良くないのでまた薬草を頂きに来たの。」
「それはそれは…。すぐに案内人を呼ぶよ。」
「いつもありがとうフクロウさん。」
何のこれしき、と優しく微笑む口元に合わせて青の目が三日月型に歪む。
彼は森の入り口に生えている大木の上にいつも座って来訪者をもてなしている。
この『帰らずの森』と呼ばれる樹海には、本には載っていない種類の薬草がごまんと生えており、長年研究者や学者達の憧れの地として有名なのだ。
だがしかし不思議な事に、数人の勇気ある学者達がこの森に探検へと向かったっきり帰って来ず、未だに行方不明なんだそう。私はもう何度も出入りしているというのに。
「お待たせ。すぐに彼女が来るからね。」
「…ねぇ、フクロウさんはいつもそこにいるの?」
「まぁね。僕は地に下りられない。」
「じゃあ消えた学者さん達の事も知ってる?ずっと行方不明なんだって。」
「…さぁ。森の狩人君にでも見つかったんじゃないかな。」
「だぁれ?」
「知らなくていい人だよ。」
「待たせたな。」
ずぅっと上を向いていたので首がゴキゴキ鳴る。
ふぅ、と一息ついて横を向くと、いつもと変わらないしかめっ面をした案内人と呼ばれる女性。
グズめ、と悪態をつかれたがいつもの事なので聞こえなかったフリをした。
「良いか人間。いつも言っているが絶対に僕から離れるなよ。後々が面倒臭いんだ。」
「ねぇ、どうして女の人なのに僕って言うの?」
「おい、わざわざ貴様ら人間の言語に合わせてやってるんだぞ。価値観まで合わせたら僕が腐っちまうだろう。」
「ふぅん。」
「余所見するなよ。狩人の野郎と食人木にだけは目を付けられちゃあならないからな。覚えとけバカ。」
「なんでいっつも悪口言うの?」
「黙れバカ。」
ズンズンと私のいる後ろを振り返る事もなくブツブツチッと時々舌打ちの混ざる物騒な独り言を呟きながら前へと進む彼女の後ろを懸命に追う。
こっちだよ、こっち。
「分かってるってば。」
あ!違う右!
「案内人なのに間違えるの?」
すまない。よし、次は左だ。後ろは振り返るなよ。
「うん。…うん?なんか、声、変じゃない?」
「よぉお!お前か!Aって酔狂は!」
ザバァ!!と盛大な音を立てて後ろの茂みから飛び出してきた男の子。
キラキラとした瞳と明るい声音。しかしどこか毒々しい。
「友達になろうぜ!」
初めて会う、生物。
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すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます!!! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです!夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…!キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…!新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします!これからも陰ながら応援しています…! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……!!これからも更新頑張ります〜! (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2019年6月9日 18時