未知:使徒(新ハンター) ページ23
「わぁ、ねぇ猫だよ。野良かなぁ、痩せっぽちだ。」
暗い廊下の中央にぽつりと座り、何やら一生懸命に身体を舐めまわしている。
館内に動物がいるなんて別に珍しいことでも無いけど、何だかその猫だけは異質だった。
目は真っ黄色で出っ張り、異様なまでに細い身体、ぐるりとこちらを向く顔は皮と骨ばかり。
「…不気味だよ、ねぇ早く帰ろう。アンタのリモコンは何処に忘れたの。」
「それがさぁ…」
と指差したのは猫を跨いだ先にあるハンターの移住塔へ繋がる扉。
ギロリ、と技師を睨むと首を竦めて「だって映写機が珍しくて…」と言い訳を始めた。
「アンタのそういう所がいけ好かない。なんでったってハンターなんかと…」
「うるっさいな!好奇心には勝てないだろ!だってだってあんなに完璧な映写機みたことな」
ダラダラ続く言い訳に頭を振り、さっさとこの場を後にしようと足を進めた瞬間
目の前に差し出された真っ青な手。
しばらく見詰め、手が目の前にあるという状況を頭の中で考える。
目の前に手。目の前に手。私の身長は165cm。目の前に手。
相手の 顔は 見えない。
震えながら後ろを振り向くと、技師は遥か高くを見詰めてあんぐりと口を開けていた。
その様子を確認し、深呼吸をして徐々に上へと視線を向ける。
先程の猫のように細い足から、手首、腰、首、首、頭。
顔と目が合った瞬間背筋が凍りついた。
顔だけ仮面のように白く、本来であれば白目の部分が黒く染まり、黄色い猫の目が爛々と此方を見つめている。
ハッ、ハッ、ハァッ、ゼッ、ひゅ、
気付けば二人一緒に走り出していた。
さっき抜けた腰なんて嘘のように軽く、多分今まで以上に足が早かった事は無いだろう。
ガタガタとけたたましい音を立てて一目散に部屋へ転がり込む。
ベッドへ2人同時に突っ込み、荒い息を落ち着かせながら布団を頭から被る。
ガチガチガタガタと歯の鳴る音から風が抜けるような呼吸まで全ての音を閉じ込め、朝まで一睡もしないまま1晩過ごした。
誰かがドアを叩くまで2人で縮こまり、あれは全部夢だと自分に言い聞かせた。寝てないのに。
ついに部屋から引っ張り出されてお知らせだと渡された紙には技師の忘れ物、オフェンスと傭兵の喧嘩騒動から全てが書かれており、いつもの日常だと安心して裏返した。
昨日のあれが新ハンターとして書かれ、黄色の猫目が光っていた。
しんらいと無知:調香師→←愛であれよと願うばかりです。:白無常
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すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます!!! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです!夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…!キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…!新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします!これからも陰ながら応援しています…! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……!!これからも更新頑張ります〜! (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2019年6月9日 18時