死を持って初めて意味を成す。:納棺師 ページ20
一目見た瞬間、女神だと錯覚した。
そんな外見を持つ彼女は1日ともいわずに荘園中で話題となり、人気者となり次は俺たちと試合に、いいや私たちとの試合へ等と誘いがひっきりなしの様だった。
美しいと思っただけで別段仲良くなりたいとは思わなかったけれど、そんな僕にも彼女は愛想良く接してくれて、初日で友達になった。名前も教えてくれた。
他の人間よりも彼女を優先して助けたかったから早く怪我しないかな、と願いながら1人解読を進める。
と、早くも占い師がダウン。
舌打ちしながら棺桶に化粧を施し、蘇生の準備を始める。
だけれどハンターのやつ、蘇生人形に気付いたようで占い師を放置。吊らない気だ、面倒くさい。
彼女の分の棺桶がこれでパァだ。畜生。
治療しに踊り子が占い師の元へ。解読に集中しろというのにバカなのか。あぁホラ死んだ。ダブルダウン。
もうこの試合は捨てだな。せっかく彼女と一緒だってのに…
さっさと自分の暗号機をあげて次の暗号機へ。
彼女とは顔を見に一瞬会っただけで会話はしていない。どうせなら声を、もう一度。
その思いから次の暗号機よりも彼女を探していた。
だけれど何処を探してもいない。解読も、チェイスもしていない。
ハンターは?残り2人だから引き分けにするつもりか。
結局走り回って最初の所へ。
と、そこには彼女が、居た。棺桶の前に立って何かしている。顔を、近付けて
「Aさん、」
「、ぁ、え、いそ、っぷさ、ん」
「何してるんですか。僕の、か、棺桶に。しかもそれは…」
占い師の顔が描かれた物だ。
僕がそう言うと、彼女は真赤な顔でぽろぽろ泣き出した。
だって、だってこの方、死んでるんです。動かなくて、冷たいんですよ。
そう言い訳されたが正直何を言っているのか分からなかった。
「不道徳だと、仰るんでしょう。こんな、貴方の仕事を冒涜する様な真似、ごめんなさい、でも、」
「ぇ、あ、その、まさか貴女が」
「ごめんなさい、ごめんなさい、愛してるんです。」
ますます酷く泣き始めた彼女はそれでも美しい。
水分の抜けた皮膚、固くなった唇にキスをし、舐め、呼吸を荒くしながら愛情を貪る彼女を止めることができなかった。
いつの間にかハンターは投降し、強制的に荘園へ戻される。
死体へ恋愛感情を持ってしまう彼女をどう愛せば良いのか、そもそも我々は彼女の目にどう映っているのか。
その日から怖くて彼女と目を合わせられなくなった。
480人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます!!! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです!夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…!キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…!新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします!これからも陰ながら応援しています…! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……!!これからも更新頑張ります〜! (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もゆう | 作成日時:2019年6月9日 18時