画家と私。:ジャック(リッパー) ページ16
買い物から帰ると鍵が開いていた。
ドアノブ引いたまま少し思案して、泥棒が襲って来た場合の抵抗パターンをいくつかイメージし覚悟を決めて部屋へ入る。
部屋の真ん中。
描きかけの絵を眺めるようにしてソイツは座っていた。
大物気取りで僕の絵を眺めているが、多分何も分かっていない。
僕が静かに背中を睨みつけていると、視線に気づいたのかくるりと振り返って僕の姿を確認した瞬間嬉しそうな笑顔で「お帰り親友!」とあからさまなご機嫌取りを始めた。
「やっぱり君の絵は最高だな!特にこのさ…何だろう…えっ何これ…あの〜…羊みたいなコレが…」
「…それは花だよ。君に言っても分からないような花だ。」
「花だ!そう花!いや分かっていたとも親友。これは花だろ?君の描く物は全て分かってるんだ。」
「嘘に決まってるだろそれは羊だバカ。」
「謀ったな。」
むむ、としかめ面で睨まれたがこっちがしかめ面したいくらいだ。
ことある事に僕の家へ押しかけては僕の分の飯を食い好き勝手した後帰るこの自称親友。
もう出会いすら忘れる付き合いだが、今回は何だか様子が変だ。
買ってきた物をしまいつつ、訳を探る。
「…で、何を?またたかりに来たのか?君ん家は金持ちだろ。どうして僕の家に来るんだ。」
「いや、いやそれがさ、聞いてくれよ。私結婚する事になってたんだ。」
ゴトン。
思わず戸棚からリンゴを落とした。
け、結婚。彼女が?
「ハ、ハハ。凄く面白いな。男みたいな喋り方の君でも結婚できるのか。」
「女らしい言葉遣いが好み?できるよ。それで、結婚させられそうになったからここへ逃げてきたの。あのままだったら私、確実に破瓜させられてたわ。」
「そういう問題じゃないだろ…。使う言葉に問題があるんだな君は…。そ、それで、まさかずっとここにいる気じゃないだろうね。なぁ、え、おい、」
思わず彼女に駆け寄り肩を揺らして問う。
焦る僕をいやらしい笑みで見詰めながら彼女は答える。
「朽ちるまで運命を共にしようじゃないか、親友。」
キラキラと輝く瞳に見据えられ、自身の顔から血の気が引いていくのが分かった。
彼女はというと、長い金髪を手で弄りながら「もう切ってしまおうかな。」等と自分勝手だ。
愛してもいない女性と同棲。
結婚していない。しかも別に婚約者有り。父親は権力者。僕は天涯孤独。
「ジャック〜ねぇ〜お腹空いた〜。」
「黙ってくれ…。」
頭を抱えて座り込む。
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すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます!!! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです!夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…!キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…!新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします!これからも陰ながら応援しています…! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……!!これからも更新頑張ります〜! (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2019年6月9日 18時