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堕ちる。*バットマン* ページ21

コウモリが、墜ちた。

捕まるのはゴメンだといつものように必死で逃げていた時。
私だってまぁ毎度の様に捕まってしまうのだろうな、と思っていたし、彼だってきっとすぐに捕まえられると思っていた 筈。私は弱いから。

「あ。」

目眩がするほど高い訳でもない廃ビルの屋上。
手すりはあった。フェンスは無かった。
私がバランスを崩した訳じゃ無い。彼だった。
彼は手すりに捕まらず、ただ堕ちる。
私は落ちたく無かったので、手すりに半身を掛けながら彼の身体がゆっくりと下に堕ちていく様を眺めていた。

正直、これで死んでくれたらと思った。
闇に怯えることも、毎晩空を見上げてあの忌々しいシグナルを確認しなくてもいい。
彼が死ねば、と考えが頭に浮かぶが、それとは反対に私の腕は堕ちてゆく彼に伸ばされる。

だが彼はこちらに手を伸ばさなかった。
掴もうとも、私の顔を見ようともせずただ空に身を任せ、そのまま墜ちた。


下に赤い水溜まりが広がっていくのを見て、何とも言えない恐怖に襲われる。
彼が死ぬ、望んでいた事だがいざ目の当たりにすると喜んでも居られず飛ぶように階段へと向かった。


まだ微かに息はある。
思わず安堵のため息が漏れた。が、それも束の間。腰にある銃を抜き出し標準を彼の眉間に合わせる。
このままコイツを逃がしたら、また同じ日々の繰り返しになってしまう。

彼はまだ起きない。掠れた呼吸を繰り返して血を流し続けている。

「…撃てる訳が無い。」

そう、撃てる訳が無いのだ。私にそんな勇気はない。
自分を納得させる様に繰り返し、銃をしまって彼の脚を持って引きずって行く。

死体運びをしていて良かった、とつくづく思う。その為だけに作った筋肉がよく役に立つ。

「どうしてこんなに重いの、バカなんじゃないの。アホみたい。」

少々雑ではあるが、すぐそこに停めてあった車の窓を叩き割り、車を盗む。
防犯もしない平和ボケした人間がまだ居たとは、と内心感動しながら後ろの座席に巨体を突っ込む。

「ホントに、もう、何、どうしよう。」

ハンドルに頭を乗せて、初めてそこで涙が出た。
後部座席からは未だに掠れた弱々しい呼吸音が響いている。

面白さ"ゴッサム"*初期アーカム組*→←正体*ガラハッド、マーリン*



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岡P(プロフ) - 初めて読ませて頂きました。どのお話もとても面白く楽しませてもらいました。これからも素敵な作品楽しみにしています。 (2022年3月9日 21時) (レス) id: eaa010ae17 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もゆう | 作成日時:2020年4月30日 21時

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