【d!】Lots of stories【短編集】

主の願い kn ページ34

＊
息抜きとリハビリだから色々許して



『マスター』
「……」
『起きてください、マスター』

私に膝枕をさせて約2時間眠っていたマスター。
最近忙しくて睡眠をとっていないマスターを起こさぬようにあれこれしていたが、そろそろ足が死にそうだ。

「…ん、A……？」
『マスター、おはようございます』
「…おう」

マスターは体を起こし、目を擦る。
…まだ眠たそう、質が悪い睡眠だったのだろうか。
もしそうなら起こさなければ良かった。

「…そーいや、A」
『はい』
「お前は願いが叶うなら、何を願うんや？」

マスターは私を見る。
…私の願いなど、もう叶えられない。
口にしたって笑われるだけである。

『……私に願いなどありません』
「それはほんまか？」
『私はマスターのそばに居られたら充分です』
「そうか」

もし、杯を手にしたら、私は何を望めばいいのだろうか。
…そもそも使い魔の私の願いを叶えてくれるかは知らないが。

「俺はな、国民全員が笑顔になれる国が作りたいんや」
『…何故ですか。今でも国民は笑顔で溢れています』
「A、それは上辺だけや。視野を広げて見たら分かる」
『マスターはこの国の王を殺そうと思っているのですか？』
「直球やな。…まぁ、そうやけど」

知らなかった、マスターは王を殺して自分が新しい王になろうとしているのか。
マスターと共に長い間暮らしていたが、まだまだ知らない事はあるんだな。

『マスター、それなら私に命令すればいいではありませんか』
「…なんでや」
『貴方の望みなら私は出来ます。暗殺など、容易いこと』

例え私が抗えども、令呪を使えば可能。
そんなこと、頭のいいマスターは分かっているはずなのに。
何故、私を使わないのでしょうか。

「…そんなくだらん事でAの手を汚したくないわ」
『く、くだらない……！？』
「確かに望めばやってくれるやろな。でも、一波乱あった方が楽しめるやろ？」
『そう、なんですか…？』
「少なくとも俺はそう思うで」

マスターは微笑んだ。
……マスターは本当に、王の死を望んでいるのだろうか。
いつものマスターなら効率を優先するため、わざわざ時間がかかることをしない。

「なぁA」
『はい』
「たまにはマスターじゃなくて、コネシマって呼んでや」
『承知しました、コネシマ様』
「…様は付けんでええ」

マスターは私に近づき、頭を撫でてくれた。
……お願いしますマスター、貴方の本当の願いを私に教えてください。

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