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別の日、私はまたあの場所に来ていた。
社「また会ったね、Aちゃん」
『小鳥遊さん…』
私たちはベンチに座った。
社「君と少し話がしたかった。
本当はピアニストになりたくはないんだろう?」
驚いた。
会って二日ぐらいしか経っていない相手に気づかれたから。
『はい…
本当は演出家になりたい…』
社「家族には話さないのかい?」
私は首を縦に振った。
『お父さんは私がピアニストに絶対なると思ってる』
社「確かに桜木は君に期待しているね。
それ故に別の道を言い出すのは難しいね。」
社「素直に、自分の気持ちを言ってみなさい。
何も言わず後悔したまま諦めるよりも」
『もし、それでダメだったら?』
社「そのときは私にいつでも相談して。
これ、連絡先」
そう言ってメモを受け取ると、小鳥遊さんは去って行った。
夜。
夕食時は静かだ。
誰も話さない。
『あの、聞いてほしいことがあるの』
皆何も言わず私を見ている。
『私、演出家になりたい』
弟は何も思っていないのか、そのまま食事を続けている。
母は驚きを隠せていない。
父は怒りのような驚きのような何とも言えない顔をしている。
分かるのは理解されていないということだけ。
父「A正気か?」
私は頷く。
父「お前はピアニストになりたいんだろう?」
『ごめんなさい、お父さん。
私は中三の時からずっと演出家になりたいと思ってた
許してくれませんか?』
私は立ちあがり、頭を下げる。
父「簡単な道ではない。
だがそれはピアノも同じだ。
A、高校を卒業したらすぐ海外で勉強しなさい」
許してもらえた…!
『お父さん!ありがとう!』
父「ご飯を食べなさい」
父は微かに笑っていたように感じた。
私は今にも天にのぼりそうなほど嬉しい。
こうして私の道は切り開けた。
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作者名:一葉桜雲 | 作成日時:2019年4月2日 22時