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翌日、すっかり体調も良くなった私は、一日中あの廃屋の整理を手伝わされ、

とうとう引越しの日を迎えることになった。

キッチンとリビング、寝室のみが綺麗に片付けられたその家で、

今夜から私達は、新しい生活を始める。









荷解きを終えたら、もう深夜2時を回っていた。

明日から、秋学期が始まるっていうのに。

ベッドメイキングを終えて一息ついた私達は、一緒にお風呂に入ることになり。

マンションの狭いお風呂から比べると、段違いに大きなこの家のお風呂は、

バスタブに並んで入っていても、肌が触れ合わないほど。

なのに北斗は、何故か距離を詰めてくる。

「何で?
こんなに広いんだから、ゆったり入ればいいじゃん」

そう言っても北斗は、聞こえてないふり。

私が少し離れたら、すぐに詰めてくるから。

結果、バスタブの中で追いかけっこ状態になって、私はすっかりのぼせてしまっていた。

ぐったりした私を過剰に心配してる北斗は、私の髪から体まで全てを洗い上げて、

体も拭いて、髪も乾かしてくれた状態で、珍しく私をベッドまでお姫様抱っこで運んでくれた。

正直もう体調は復活してたけど、北斗があまりにも甲斐甲斐しいもんだから、わざと怠いふりをして。









遅れてベッドに入って来た北斗は、

「こういう時は横向きで寝た方がいいんだって」

とか言いながら、私を壁側に向かせると、背中から遠慮がちに腕を回してくる。

「気分が悪くなったら言って」

その声は本当に私のことを心配してるって感じで、急に胸が痛みだした。

「北斗」

不意にその名前が呼びたくなる。

「何?」

不安げな北斗の声。

「私が死んだら、北斗はどうする?」

何でそんなことを聞きたくなったんだろう。

あんまり北斗が心配してくれるからかな。

慾深い私は、もっと心配してほしくなったのかもしれない。









「…わからない
もしかしたら、後追いするかもね」

…そこまで!?

北斗の愛は、私の思ってる以上に重すぎる。

「まあ、しないと思うけど」

…って、どっちだよ!

「でも、A以外の人とは再婚しないだろうな」

まさかそれって、もう結婚している設定?

とにかく北斗の発言は、ツッコミどころが多すぎる。









「たぶん、死んだように生きると思う
もう誰も愛せなくて、
きっと一生、Aのことを反芻しながら、その思い出だけで生きていくんだろうな」

そう呟いた北斗の声があまりに切なげで、なんだか泣きたくなってきた。

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ゆきの - 何十回もよんでる大好きな作品です。更新待ってます。 (2021年7月22日 8時) (レス) id: 3207e964c9 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 一番大好きな作品です。更新待ってます。 (2021年7月14日 12時) (レス) id: aaee343ea9 (このIDを非表示/違反報告)
にこ - ほんとに大好きな作品です。多分もう10回以上読んでいます。更新待ってます。 (2021年5月16日 22時) (レス) id: 931e445941 (このIDを非表示/違反報告)
ミサキ(プロフ) - 何度読んでも心が締め付けられます!とても大好きな作品です。 (2021年2月3日 10時) (レス) id: a1c54d44f3 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - 大好きで何度も読み返すくらい好きなお話なので、更新してくださり嬉しいです!続きも楽しみにしています!北斗くんが女の子に嫉妬しているとこが見たいような気がします。 (2021年1月14日 3時) (レス) id: b839608c40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめん x他1人 | 作成日時:2019年5月19日 3時

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