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夏休みの後半は、バイトの時間以外はずっとあの廃屋でお片付け。

まずは門から玄関へ続くジャングルを刈り取って道を作り、

今はちょうど、玄関入ってすぐの無駄に広いリビングに取り掛かっているところ。

あまりの暑さに、

「エアコンつけようよ
熱中症になっちゃうよ」

そう訴えても、北斗は涼しい顔をしてこう答える。

「そう?
窓からいい風が入ってるから、涼しくない?」

「…涼しくない」

「こんなに広い部屋でエアコンを使ったら、電気代がすごいと思うけど?」

なるほど…、本音はそこか。

確かに貧乏学生な私達には、エアコンは大敵かもしれない。









「新学期が始まるまでには引っ越そう」

北斗が珍しく熱くなってるから、素直に従ってあげてるけど。

バイトと廃屋の往復の生活で、私はもう既に体力の限界が来ていた。

あと3日で引っ越しってところで、とうとう私は、

体調不良で、そのままベッドから起き上がれなくなってしまった。

「夏の疲れが出ちゃったのかもね」

そう言いながら北斗は服を着替え始める。

「今日は寝てていいよ」

…って、待って!

まさか、私を置いて行く気?

玄関まで行きかけた北斗は、

「あ、忘れてた」

そう言ってまた、ベッドまで戻ってくる。

「はい、これ
何かあったら連絡して」

私のスマホを枕元に置き直して、おでこに律儀に挨拶のキスをしたあと、本当に部屋を出て行ってしまった。

…本気?

私より廃屋の片付けの方が大事ってこと?

ありえないんですけど!!!









だけど微熱のある私は、けっこう際限なく眠れることに気付いた。

北斗が出て行ってすぐ、5分くらいですぐに寝入ってしまったし。

次に目覚めたのは、美味しそうな匂いと共に北斗に揺り起こされたから。

「起きて
Aの好きなもの作ったから」

カーテンを閉め切ったままの部屋は薄暗くて、どうやら私は一日中眠っていたようだ。

「…今何時!?」

「12時」

「夜の?」

「まさか、昼に決まってんじゃん」

鼻で笑いながら、北斗は私の手を引いて起こしてくれる。

「昼ごはんを作りに帰ってきただけ」

「じゃあ北斗は、すぐ行っちゃうの?」

その質問に、北斗は少しだけ動きを止めた。

「…A、もしかして寂しかった?」

なんでそんなに意外そうな顔してるの?

病気で寝込んだ時なんか、普通は誰かに傍にいてほしいもんなんじゃないの?

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ゆきの - 何十回もよんでる大好きな作品です。更新待ってます。 (2021年7月22日 8時) (レス) id: 3207e964c9 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 一番大好きな作品です。更新待ってます。 (2021年7月14日 12時) (レス) id: aaee343ea9 (このIDを非表示/違反報告)
にこ - ほんとに大好きな作品です。多分もう10回以上読んでいます。更新待ってます。 (2021年5月16日 22時) (レス) id: 931e445941 (このIDを非表示/違反報告)
ミサキ(プロフ) - 何度読んでも心が締め付けられます!とても大好きな作品です。 (2021年2月3日 10時) (レス) id: a1c54d44f3 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - 大好きで何度も読み返すくらい好きなお話なので、更新してくださり嬉しいです!続きも楽しみにしています!北斗くんが女の子に嫉妬しているとこが見たいような気がします。 (2021年1月14日 3時) (レス) id: b839608c40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめん x他1人 | 作成日時:2019年5月19日 3時

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