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「誰かに合わせて生きるとかさ、北斗らしくないと思う」
「公務員になりたいって、俺らしくない感じ?」
「北斗が安定とか気にしてるあたり、不気味。
北斗の好きなものって何?
得意なことは?
やりたいことはないの?」
矢継ぎ早に質問を繰り出せば、北斗はしばらく考え込んでしまう。
私を養うだとか安定だとか言ってる北斗は、私の知ってる北斗じゃない。
「北斗のやりたいことって何?
私と付き合ってなかったら、どうしてた?」
「Aと付き合ってなかったら、もしかしたら…」
「もしかしたら?」
「…大学院に進んで、ずっと近現代文学とか歴史とかの研究をしていたかったかも」
ほら、やっぱり。
いつもなら自分のやりたいことに突き進んじゃう北斗なのに、今回に限ってはなんか保守的で面白くない。
「じゃあ、なればいいじゃん、それに」
「でも俺的には、そんなことよりも先に、Aと結婚したいんだけど」
とか、その黒目がちなつぶらな瞳で訴えかけてくる。
あの同窓会の知らせから、北斗はちょっと迷走気味。
まだ大学一年生なんだから、そんなに焦って将来を考えなくてもよくない?
それに私は、まだまだ東京にいたいんだ。
東京に来て半年以上経つけれど、インドア系の北斗と一緒にいると全く東京生活を満喫できていないような気がして。
「私はまだまだ東京にいたい
だから北斗もその間、好きなことをすれば?」
なのに北斗は、納得いかないって顔をして黙り込む。
急いで将来なんて決めないでいいじゃん。
「急いで将来を決めて何が悪いわけ?」
不満げに北斗がボソリと呟く。
「なんか、心配なんだけど」
いつもなら夕食後はすぐに食器を下げてしまう北斗なのに、今日はテーブルの上にひろげたまま、向かいの席から、わざわざ私の隣に移動してくる。
「心配っていうより、なんか怖い」
珍しくそんなネガティブな言葉を口にした北斗は、隣から私をまるでぬいぐるみを抱くみたいにぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。
「Aさ、俺から逃げようとしてない?」
「してないよ」
「Aだけ東京に残って、俺だけ地元に帰そうとか思ってる?」
「思ってないって」
「じゃあ、同窓会行く?」
「…同窓会?」
何でその話に戻っちゃうわけ?
私は行かないって、前に宣言しておいたじゃん。
北斗が何でここまで同窓会に行きたがるのか、よくわからない。
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ゆきの - 何十回もよんでる大好きな作品です。更新待ってます。 (2021年7月22日 8時) (レス) id: 3207e964c9 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 一番大好きな作品です。更新待ってます。 (2021年7月14日 12時) (レス) id: aaee343ea9 (このIDを非表示/違反報告)
にこ - ほんとに大好きな作品です。多分もう10回以上読んでいます。更新待ってます。 (2021年5月16日 22時) (レス) id: 931e445941 (このIDを非表示/違反報告)
ミサキ(プロフ) - 何度読んでも心が締め付けられます!とても大好きな作品です。 (2021年2月3日 10時) (レス) id: a1c54d44f3 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - 大好きで何度も読み返すくらい好きなお話なので、更新してくださり嬉しいです!続きも楽しみにしています!北斗くんが女の子に嫉妬しているとこが見たいような気がします。 (2021年1月14日 3時) (レス) id: b839608c40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめん x他1人 | 作成日時:2019年5月19日 3時