三十四個目の火光 ページ34
ついに杉元さんの演目だ。
｢おいッ古火！｣
｢おっと月島さん、そんなに急いでどうし、｣
｢杉元は！？｣
｢？…杉元さんなら今さっき舞台に出て行ったが。｣
それを聞くと月島さんは表情を歪めた。
……おっと、何かありそうだな。
｢月島ァァァ！！杉元はもう舞台に！！｣
｢わかっています！｣
理由を聞く間もなく二人は舞台そでに走っていってしまった。
私も着いていく。
そでから顔を覗かせると杉元さんは水をかけている最中だった。
……すっごく冷たいらしいな。
｢なあ月島さん。一体どうしたんだ？｣
｢ッ………色々あっていま杉元が持っている刀は本物だ。｣
思わず声が漏れた。
隣にいた鯉登さんはそっと手にあるものを見せてくれた。
鯉登さんの手には刀身があった。……つまりこれが偽物の刀身！！
｢どどど、どうするんだ！？これから杉元さんは腹を……！！｣
｢ああ、それもわかっている！とりあえず杉元に気づいてもらわなければいけない。｣
ずっと舞台を伺っている月島さんと鯉登さん。
その隣には山田さんも杉元さんを見守っていた。
｢アッ！切った！｣
自身の腕を切ったあとにバッと振り返る杉元さん。その目線の先には偽物の刀身をもった二人。
杉元さんの顔は真っ青になっていた。
それもそうだ。
本物の刀なら切ったら当然痛い。腕と足を一箇所ずつ切っただけでも痛みは相当だろう。
少し動かなかった杉元さんはそのまま続ける。
腕と足は我慢できても腹はさすがに……！
すると途端に視界が暗くなる。
｢万が一だ。目を瞑っておけ。｣
｢……私は見慣れている。大丈夫だ。｣
そう言ったが暗いまま。
……月島さんは顔から手を離さない。
まだ月島さんは私を子ども扱いしているみたいだな、ったく。
あ、
｢なあ月島さん。杉元さんに�爐發靴皚瓩�あった場合、私が熱で止血しよう。｣
｢なっ……！｣
｢迅速に動けるように目隠しを外してもらいたい。……月島さん、私は月島さんが思っているほど弱くはないんだぞ。｣
そんな話をしている間にも演技は進んでいく。
ついに、腹を切る演技までやってきた。
一体どうするつもりなんだ杉元さん…………。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
