三十三個目の火光 ページ33
｢お次は鯉登音之進の『坂綱』でございますッ！｣
約四十度に傾いた綱を渡る鯉登さん。
歓声も上々、毅然と綱を渡っていく鯉登さんだったが、急に焦ったように早足で何かに向かって行く。
小さな紙……のようなものがあるが…。
｢キエエェェエェッッッ！！(猿叫)｣
叫びながら鯉登さんは飛んだ……えっ、飛んだ！？
そのまま長吉くんが芸をしているハシゴに着地した。
どうやらそのハシゴはバラバラになるものらしくパカッと外れてしまう。
それをもろともせずまた飛び移る。
｢キエエエッ！！！(猿叫)｣
今度は薄い紙の上を歩く『紙渡り』に使う紙の上を走り抜ける。
そんな衝撃に耐えられなかった紙が破れる音が聞こえた。
もちろん鯉登さんは運動神経やらが良いので落ちることなく別の場所へ。
｢キエエエェッ！(猿叫)｣
それからどんどん飛び移り挙句には『ロシア式飛び』と言う空中で手を繋ぎながら移動する軽業に加わる。
……しっかり軽業の一部として見えるのがなんだかすごいな。
鯉登さんは自身の足で勢いを付けて舞台にいるみんなの真上を回転しながら通った。
｢キエエエェッ！！！(猿叫)｣
そして見事な着地。
鯉登さんはその小さな紙を拾い上げて汚れを払っていた。
｢｢｢｢ウワアアア！！！！！！｣｣｣｣
観客の声がドッと湧き上がる。
それもそのはずあんなすごいもの見せられて声を上げない方がおかしいだろう。
｢みみみ、見たか杉元さん！｣
｢……！！｣
｢軽業の神様は本当におわした……！！｣
杉元さんの袖を興奮気味に引っ張るが杉元さんは口をあんぐりと開けていたため何も言ってくれなかった。
がしかし、彼の様子を見れば杉元さんも鯉登さんのを見ていたに違いない。
舞台そでに険しい顔で戻ってきた鯉登さん。
……納得いかなかったのか？
｢鯉登さんお疲れ様だ！凄かったな！｣
｢……貴様の芸も中々のものだったぞ。｣
そう言って優しく頭を撫でてくれた鯉登さん。
ふふふ、鯉登さんに褒められると自信がつく。
舞台に目をやると少女団が踊っていた。
みんな動きがあっていてとても可愛かった(約二名ごつい男性がいたが気にしない)。
……
次だ……次が最後の演目。
｢さて次は最後の演目！山田曲馬団大トリでございます。｣
.
｢不死身の杉元…………ハラキリショ〜オオゥ！！！！｣
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
