二十六本目の火柱 ページ26
｢今日はこの樺太アイヌの村に滞在しよう。｣
｢もっと移動すれば豊原という樺太で一番大きな街があるんだろう？｣
｢一番大きな街！？行ってみたいぞ！｣
鯉登さんは表情を暗くしながら｢立派な旅館があるだろうにな…｣と呟いている。
私はこの所街という街に行っていなかったので興味がある。
まあ行けないのだけれど。
救いは明日買い物に行くということだけだ。
.
という昨日の会話があったためちゃんと豊原に来ていた。
私は迷子にならない程度ならと街を散策することを許された。
｢凄い、賑わっているなあ！｣
活気に溢れていて歩くだけでも飽きない。
ドン！
｢わぷっ、｣
｢わっ！｣
何かと衝突してしまった。
かなりの衝撃で尻もちをついてしまう。
顔を上げると同じくらいの男の子が汗を滲ませながら素早く立ち上がっていた。
そしてさっさと走り去ってしまった。
｢え〜…、謝るぐらいしたらどうなんだ……。｣
彼を見送った後すぐに風がふわっと起こり、私の横を何かが通り過ぎて行った。
……あれ、杉元さん達だ。なんであんな…。
｢おい！大丈夫か！｣
｢谷垣さん。｣
谷垣さんとチカパシくんが近くにいたらしく駆けつけてくれた。
どうやら二人も杉元さん達が走っているところを見つけただけで理由は知らないらしい。
｢杉元さん！月島さん！｣
｢あ、Aちゃん！あのガキとぶつかってたよな！？大丈夫だったか？｣
｢大丈夫だ。それよりどうしたんだ？｣
実は、と杉元さんから事情を聞く。
鯉登さんだけが見失わずに追いかけて行ったのか。
あの人動体視力だけじゃなく、運動神経もいいのか。
出来た人だ。
パァンｯ…パァンｯ………！！
｢銃声だ！｣
月島さんに着いていくと見えたのは大きな布。
たくさんの人が何やら設営しているようだった。
｢あそこに鯉登さんがいるな。｣
おじさんとあの時ぶつかった男の子と鯉登さんが立っていた。
彼が杉元さんの荷物をスったのか。
ゾロゾロとやってきた私たちを見ておじさんは目を丸くした。
そして事態を察したのかガバッと土下座をした。男の子も一緒に。
……彼はそんなに悪い事だと思っていない顔だけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
